改訂新版 世界大百科事典 「圧縮比」の意味・わかりやすい解説
圧縮比 (あっしゅくひ)
compression ratio
ピストンエンジンの圧縮行程において,シリンダー内のガスが何分の1に圧縮されるかを容積比で表した値。(行程容積+すきま容積)/(すきま容積)によって求められる。熱力学の理論上は圧縮比が大きい(高い)ほどより多くの有効仕事を取り出せる(熱効率が高い)が,現実のエンジンでは,圧縮比を高め過ぎると摩擦が増え,かえって効率が低下し,12ないし16程度の圧縮比が実現できれば好ましいとされている。しかし,ガソリンエンジンでは圧縮比が高くなるとノッキングを発生しやすくなるため,ほとんどのもので圧縮比は10以下にとどまっている。空気のみを圧縮するディーゼルエンジンではノッキングの心配がないので,圧縮比が20を超えるものもある。ロータリーエンジンの場合も,ハウジング内に閉じ込められたガスの最大容積と最小容積との比によって圧縮比を定義できる。
執筆者:酒井 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報