日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘニール」の意味・わかりやすい解説
ヘニール
へにーる
Hœnir
北欧神話の神。主神オーディンやロキといっしょに現れることが多く、目だたない存在であるためにその神性ははっきりしない。人間が創造されたとき、ヘニールは人間に心を与えた。また「俊敏なヘニール」とよばれる一方、アサ神族のなかではいちばんの臆病(おくびょう)者ともいわれ、かつてアサ神族とバニル神族の和睦(わぼく)が成立して互いに人質を交換したとき、アサ神族はヘニールに智者(ちしゃ)ミミルをつけて人質に出した。ヘニールは恰福(かっぷく)がよかったのでバニル神族は彼を主神にいただいたが、無能で、万事ミミルに相談したために、彼らはミミルの首をはねてアサ神族の所に送り返した。以後のヘニールのことはわからないが、世界の終末ののち新生の緑の世界の誕生とともに戻ってくる。
[谷口幸男]