改訂新版 世界大百科事典 「ペルオキソホウ酸」の意味・わかりやすい解説
ペルオキソホウ(硼)酸 (ペルオキソほうさん)
perboric acid
peroxoboric acid
ホウ酸のホウ素と結合している酸素原子の代りにペルオキソO22⁻が配位した型の化合物の総称。過ホウ酸と誤称されることもある。遊離酸は得られていないが,アルカリ金属塩がいくつか知られている。代表的なものはNa[(HOO)B(OH)3]・2H2Oで,ホウ酸と過酸化ナトリウムとの反応,またはホウ酸ナトリウム溶液の電解酸化で合成される。これはNaBO3・4H2Oのように書かれることもある。脱水すると順に,NaBO3・3H2O,NaBO3・H2Oの組成となり,高温では分解して無水メタホウ酸ナトリウムNaBO2と変化してペルオキソ酸塩ではなくなる。その他のアルカリ金属,アンモニウム,バリウム塩も得られているが,構造は不明。
ペルオキソ酸塩とされていたもののなかには,実際にはホウ酸塩の過酸化水素化物とみなされるものもあると考えられている。いずれの化合物も水に溶かすと過酸化水素を生成するので,化学反応のみでは区別が困難である。過酸化水素生成反応は実用的に有用で,羊毛,絹,ストロー,象牙等の漂白,洗浄,毛髪の脱色,消毒等に用いられ,〈固体過酸化水素〉の性格をもつ。ペルオキソ基中の酸素1原子ぶんを活性酸素と呼び,その含有量で有効性の目安とする。活性酸素を15%以上含む塩は,こすっただけで爆発することがあるから取扱いには注意し,密閉して冷所に保存する必要がある。
執筆者:水町 邦彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報