有色の物質を化学的に分解あるいは変化させ無色の物質にすること。漂白がしばしば行われる代表的分野として染色工業と食品工業があるが,いずれの場合も一般的には酸化漂白が普通である。繊維の漂白は染色の準備工程として重要であり,また白のまま製品とするときは一般の漂白のほかに白さを増す目的で蛍光増白剤が用いられるが,これは漂白というよりは染色として扱うべきである。なお食品の漂白については〈食品漂白剤〉の項目を参照されたい。ここでは繊維の漂白について述べる。繊維の漂白は繊維の種類により方法が若干異なる。
木綿を例にとると,次亜塩素酸法,亜塩素酸法,および過酸化水素法などが代表的である。次亜塩素酸法は,さらし粉を4倍量の水に入れ炭酸ナトリウムを加えて調整した上澄み液をとり,繊維を2~3時間処理して漂白する。さらし粉液の有効塩素は0.2~0.4%が適当である。繊維に残留すると繊維の脆化(ぜいか)や黄変を起こすので,漂白水洗後,希硫酸で処理する。亜塩素酸法は,亜塩素酸ナトリウムNaClO2の1~2%水溶液を使用する方法で,繊維の脆化,黄変の欠点は少ないが,容器の腐食や刺激臭に問題がある。過酸化水素法は,繊維を希過酸化水素水溶液中でアルカリ性で100℃またはそれ以下の温度で処理する方法で,上記の欠点はないが一般に高価である。
羊毛や絹の漂白には塩素系漂白剤は繊維を黄変させるので使用できない。そこで過酸化水素,過マンガン酸カリウムなどの酸化漂白,および亜硫酸ガス,亜硫酸水素ナトリウム,ハイドロサルファイトなどを使用する還元漂白が行われる。とくに念入りに漂白するときは両者を組み合わせることもある。
アクリル繊維の漂白には,もっぱら亜塩素酸法が使用される。ナイロンは一般に十分な白度をもつため漂白の必要は少ないが,亜塩素酸法,ハイドロサルファイト法が使われる。ポリエステル繊維には亜塩素酸が使用されるが,化学漂白よりは蛍光増白剤による蛍光増白のほうが効果が大きい。
→しみ抜き
執筆者:新井 吉衞
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【Ⅰ】繊維類に含まれる有色物質を分解・除去し,できるだけ純白にする操作.漂白には,繊維を鮮明に染色するために,染色の前処理として行うものと,漂白品を目的とした後処理法がある.[別用語参照]漂白剤【Ⅱ】写真の銀画像の銀を酸化除去すること.カラー写真の場合にも色素の画像とともに現像銀が生成しているので,これを除去するために漂白を行う.漂白には,二クロム酸塩で現像銀を水溶性化合物に変換する方法,臭化物と鉄錯塩などでハロゲン化銀にかえて定着へ続ける方法などがある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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