ホウ素(読み)ほうそ(英語表記)boron

翻訳|boron

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホウ素」の意味・わかりやすい解説

ホウ素
ほうそ
boron

周期表第13族に属し、ホウ素族元素の一つ。ホウ砂(しゃ)、ホウケイ酸ガラスなどホウ素化合物は、古くからよく知られていた。1702年オランダのホンベルクWilhelm Homberg(1652―1715)がホウ砂と緑礬(りょくばん)の水溶液を加熱して揮発性の物質を得たが、その後ホウ砂と酸からも同じものが得られることがわかった。これがホウ酸であるが、1808年フランスのL・ゲイ・リュサックとL・J・テナールおよびイギリスのH・デービーらがホウ酸をカリウムで還元して単体として取り出した。彼は初めホウ酸boric acidにちなんでboraciumという名を提案したが、その性質炭素carbonによく似ていることからboronと改められた。地殻中にはホウ酸塩として広く分布し、天然にはホウ酸またはホウ酸塩として産出する。おもな鉱石は、ホウ砂Na2B4O7・10H2O、カーン石Na2B4O7・4H2Oなどである。単体を得るには、酸化物をマグネシウムなどで還元する方法、テトラフルオロホウ酸カリウムKBF4の溶融塩電解法などで95~98%の純度のものが得られる。純度の高いものを得るのには酸化ホウ素に炭素を加え、塩素を反応させて塩化ホウ素とし、これを蒸留して精製し、水素とともに1000℃以上に加熱したタングステンなどのフィラメント上に通すと、99%以上のものが得られる。単体には結晶性のものと無定形のものがある。無定形粉末を約1000℃に熱するとα(アルファ)菱面(りょうめん)体晶となり、さらに熱すると1100~1200℃でβ(ベータ)菱面体晶となる。その他正方晶系変態があるとされたが、これはB50C2あるいはB50N2などであることが示されている。金属光沢のある黒色結晶は、ダイヤモンドに次いで硬く(モース硬さ9.3)、半導体の性質を示す。金属と非金属の境界領域にある半金属の一つ。化学的性質はケイ素に似ている。熱すると酸素、窒素ハロゲンなどと直接化合してそれぞれ酸化物B2O3、窒化物BN、ハロゲン化物をつくる。熱濃硝酸によりホウ酸、水酸化アルカリと溶融するとホウ酸アルカリとなる。純ホウ素はシリコン半導体のドープ剤として用いられ、また中性子吸収断面積が大きいので原子炉の制御棒、遮蔽材(しゃへいざい)に利用される。そのほか、ホウ酸としてホウケイ酸ガラスの原料医薬防腐剤などの用途がある。

[守永健一・中原勝儼]



ホウ素(データノート)
ほうそでーたのーと

ホウ素
 元素記号  B
 原子番号  5
 原子量   10.81
 融点    2080℃
 沸点    2550℃(昇華)
 比重    2.37(β),2.46(α)
 結晶系   三方,正方
 元素存在度 宇宙 6.2(第39位)
          (Si106個当りの原子数)
       地殻 10ppm(第36位)
       海水 4.44mg/dm3

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホウ素」の意味・わかりやすい解説

ホウ素
ホウそ
boron

元素記号B,原子番号5,原子量 10.811。周期表 13族に属する。主要鉱石はホウ砂,カーン石,コールマン石などがある。火成岩中に広く分布し,地殻の平均含有量 10ppm,海水中の平均濃度 4.6 mg/l 。単体は黒灰色,金属光沢のある半金属固体で,比重 2.33 (無定形ホウ素は 1.73) ,融点 2000~2500℃。化学的性質はケイ素に類似し,不活発。塩酸,フッ化水素酸におかされないが,アルカリ溶融により分解される。還元性があり,銅の脱酸剤ともなる。単体としての用途はあまりないが,化合物はガラスなどの原料として重要である。

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