改訂新版 世界大百科事典 「ホー朝」の意味・わかりやすい解説
ホー朝 (ホーちょう)
Ho
15世紀初頭のベトナムの短命王朝(1400-07)。ホー(胡)朝はチャン(陳)朝の宮室の外戚ホー・クイ・リ(胡季犛)が創始したが,次代ハン・トゥオン(漢蒼)のとき明に攻められて滅亡した。しかしベトナム史上の意味は大きい。チャン朝は一族の分封制をとってスークアン(使君)以来の地方分権制を継承したが,14世紀以降,科挙出身の異姓官僚がしだいに中央進出を果たし,ホー・クイ・リはこの新官僚群を基盤として,種々の集権策をとった。1396年にはベトナム最初の紙幣〈通宝会鈔〉を発行し,98年に都をタインホアに移した。さらにチャン氏の大虐殺(1399),限田法(1398)と限奴法(1401)による大土地所有(田庄)とその労働力の制限策をとって,チャン一族の力を弱めた。また戸籍,軍制を整備して,次代レ(黎)朝の律令的集権政治への道を開いた。また文化的にはチュノム(字喃)を国字に制定し,自ら国語詩や尚書の国語訳を行うなど,レ朝後期に盛行する国語文学の基礎をつくった。
執筆者:桜井 由躬雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報