日本大百科全書(ニッポニカ) 「ぼんでん」の意味・わかりやすい解説
ぼんでん
ぼんでん / 梵天
神の依代(よりしろ)または奉納物としての大きな御幣(ごへい)。「ぼんてん」ともいう。語源については諸説あるが、「ほて」の語が梵天に引き寄せられたものであろう。「ほて」は目印として立てるものであり、西日本など広い地域で占有標をいう。秋田県その他でぼんでん祭りというのは、杉丸太に大きな御幣をつけ、火消しの纏(まとい)状にしたものを土地の神社に担ぎ込んで奉納する祭りである。福島・栃木・茨城県境の八溝山(やみぞさん)には干瓢(かんぴょう)ぼんでんなどを奉納する祭りもある。また江戸時代には、ぼんてんという、棒の先に魔除(まよ)けの御幣を数多く刺したものを、担いで売り歩く者があった。そのほか、魚などを串(くし)に刺して巻藁(まきわら)にたくさん突き立て、いろりの上などに吊(つ)る「べんけい」をいう地方もあり、魚の行商人を「ぼてふり」というのも、天秤(てんびん)棒から数本の縄を下げた形からの連想であろう。近世、劇場の櫓(やぐら)の左右に立てた2本の「招き」もぼんてんとよんだが、それらの先後関係は不明。
[井之口章次]