日本大百科全書(ニッポニカ) 「かんぴょう」の意味・わかりやすい解説
かんぴょう
かんぴょう / 干瓢
ウリ科(APG分類:ウリ科)の一年生植物であるユウガオ(瓠(ふくべ)ともいう)の白色果肉を細長く皮をむくように切り、乾燥した食品。もとは、摂州(大阪)の木津が産地であったので「きづ」ともいう。現在では栃木県が特産地として名高い。その由来については、近江(おうみ)水口(みなくち)藩主・鳥居忠英(ただてる)が、下野(しもつけ)壬生(みぶ)藩に転封となった際(1712)、名物「水口かんぴょう」をもたらしたからといわれる。収穫は7月下旬~9月で、果実が白くなり、表面の細毛が消えたころが適期である。果肉を幅3センチメートル、厚さ3ミリメートルくらいの細長い帯状に削り、日干しまたは温風で乾燥する。昔は包丁を用いた手むきであったが、大正時代にかんぴょう鉋(かんな)が考案され、現在では動力用の丸剥(まるは)ぎ機によっている。日干しのときには、カビ防止のため、1日で水分20%程度まで乾燥できるように、天気のよい日を選ぶ必要がある。なお白色果肉の褐変(かっぺん)と微生物の繁殖を抑制するため、水分40%程度にまで乾燥したとき硫黄(いおう)薫蒸を行うことがある。乾燥後は吸湿しやすいので保存に注意する。古くなると褐色が濃くなり、風味が低下する。抜けるように白いのは漂白を強くしたもので、こくがない。クリーム色をしたものが良質である。主成分は炭水化物で甘味がある。洗って塩もみをしてから煮ると、早く柔らかくなる。乾物の目方の10倍の水を加え、透明な感じになるまで煮てから調味する。味つけは、甘味をきかしたほうが味がよい。含め煮、汁の実、和(あ)え物、五目ずしや巻きずしの具、いなりずしや昆布巻きの帯などに利用する。また栃木県宇都宮には、かんぴょうを砂糖漬けにした友志良賀(ともしらが)という菓子がある。
[河野友美 2020年2月17日]