改訂新版 世界大百科事典 「ポサード」の意味・わかりやすい解説
ポサード
posad
ロシア中世都市の商人・手工業者居住区。最初は,公や貴族らの居住区である城壁に囲まれた都市(ゴロド)が山や丘の上に位置していたのに対し,そのふもとに位置することが多かったので,ポドール(裾(すそ))とよばれた。ポサードという名称は12世紀末~13世紀初頭から使用され始めた。ポサードの意義は都市の商業や手工業の発展とともに増大したが,ロシアではついに西欧的な自由な都市共同体には発展しなかった。そこでは国家権力が強く存続し,住民は国家に納税を義務づけられていた。ポサードには封建領主の私有地も存在し,ポサードの発展を阻んだ。ポサードにおける私有地の存在は,17世紀中葉政府がそれらをすべてポサード共同体に組みこむまで続いた。17~18世紀になると,城壁に囲まれた都市と無関係に成立した商工業中心地もポサードとよばれるようになる。18世紀末のロシア都市改革のなかで,商工業中心地の意味でのポサードという言葉は用いられなくなり,以後は若干の都市型の居住地を指す言葉としてのみ使われた。
執筆者:栗生沢 猛夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報