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商業 しょうぎょう commerce

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

商業
しょうぎょう
commerce

生産者が生産した物を購入し,それを消費者に販売する活動をいう。流通業とも呼ばれ,生産者に代って消費者に商品を販売することを業務としている。こうした需給関係は市場関係ともいわれ,これを構成する要素として次の3つの関係がある。

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デジタル大辞泉の解説

しょう‐ぎょう〔シヤウゲフ〕【商業】

生産者と需要者の間に立って商品を売買し、利益を得ることを目的とする事業。具体的には卸売商・小売商のような商品売買業者の活動をさすが、このほかに運送業・倉庫業・金融業・保険業・広告宣伝業などを含めて広く考える立場もある。

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世界大百科事典 第2版の解説

しょうぎょう【商業 commerce】

〈商〉と〈商業〉とは,日常用語としてのみならず,学問的用語としてもしばしば混用されている。けれども両者はいちおう区別されるべきである。漢字の〈商〉の第一義は,〈はかる〉であるが,日本語の〈あきない〉も,収穫の秋に飽き満ちた作物を互いに交換すること,すなわち交換を営むことを意味するとされている。いずれにしても,商の現象は,恵むこと,施すこと,盗むこと,奪うことではなく,己の物を他に与え,同時に他の物を己に受けて,自他ともに満足するところの取引行為を表している。

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大辞林 第三版の解説

しょうぎょう【商業】

生産者と需要者の間に立って商品流通を担い、利益を得る事業。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

商業
しょうぎょう
commerce

商品の売買に関する経済活動の総称。商業の意義と実態は、経済の発展につれてかなり変化してきているが、商業には基本的に広狭二義がある。広義の商業は、生産者から消費者への財貨の社会的流通に関する諸活動、生産および消費に関する情報を提供してそれらを指導する活動、価格を形成しあるいは調整する活動、流通活動を効率化するための促進的補助活動などをすべて包含し、生産・流通・消費にまたがる流通経済現象を経済循環の視点からとらえた全領域をもって商業とする。これに対して狭義の商業は、商品流通のなかの財貨売買のみをもって商業とし、かつ個々の主体(商人)の営利目的追求として営まれる個別経済現象の視点から、それを取り上げる。日常用語としての商業は狭義に用いられることが多いが、商業学、経済学、マーケティング論などの学問上では、むしろ広義の商業が一般的である。また、流通のシステム化、経営の多角化などにより、狭義の商業を純粋に取り出すことは、実態的にも困難になりつつある。[森本三男]

狭義・広義の商業の実態

狭義の商業は商人による財貨(商品)売買活動のみをいうから、この意味の商業は、農業、林業、漁業、鉱業、工業などと並立する。また、財貨売買活動に深く関係し、それを促進助成している金融業、運送業、保険業、倉庫業などは、狭義の商業には含まれない。さらに、財貨売買活動であっても、商人によらないものは、狭義の商業には含まれない。たとえば、消費者が自己の消費する消費財を廉価で購入するために自ら組織した消費生活協同組合(生協)、農業生産者が自己の使用する農機具、肥料、日用雑貨などを共同で購入したり、農産物を出荷するために組織した農業協同組合(農協)、製造会社の購買部門や販売部門などは、財貨売買活動を営んでいるにもかかわらず、通常、狭義の商業に含めない。
 これに対して、広義の商業では、財貨の社会的流通活動の全体をもって商業とするから、それを営む主体を商人に限定したり、活動内容を財貨売買だけに限定することはしない。商人による財貨売買業はもとより、消費生活協同組合・農業協同組合・漁業協同組合の行う流通活動、製造会社の購買部門や販売部門の行う仕入れ・販売活動、財貨の社会的流通を円滑にするためのサービスを提供する金融業、保険業、運送業、倉庫業、広告宣伝業、情報処理業、貿易業なども、当然に商業に含まれることになる。また、社会的流通の重要な基盤となる取引所、中央卸売市場(おろしうりしじょう)、為替(かわせ)市場、金融市場なども、商業のなかに取り入れて考えなければならなくなる。このようにみるならば、広義の商業の範囲と内容は、単に広範・多岐であるばかりでなく、経済の発展と国際化・情報化とともにいっそう拡大・複雑化していくことが理解できる。このことを反面からみれば、多彩な商業を的確に掌握するための体系が必要になることを物語っている。このような体系の基本枠は、広義の商業を、商品の流通機能に直接関与するものと、それを促進援助するものとに大きく二分する方法である。前者を純粋商業、直接商業、基幹商業、固有商業などと、後者を補助商業、間接商業、商業補助業などとよぶ。狭義の商業は、前者のうち商人による個別経済部分を主としてとらえていることになる。ここでは広義の商業について述べる。[森本三男]

商業の機能

国民経済の視点からみると、商業は財貨流通について、物的流通、生産と消費の指導、価格の形成・調整の3機能を果たしている。これらは、生産と消費の媒介的調整に集約されるが、このような基本機能をこれとは別の視点で再整理すると、生産と消費の人的調整、場所的調整、時間的調整、数量的調整、および品質的調整の5機能になる。
(1)人的調整機能とは、社会的分業の進展によって相互にますます未知の関係が深まっていく生産者と消費者とを、媒介して連結する作用である。商業がなければ、生産者は自己の生産物を希求している消費者を、消費者は自己の必要とする財貨の生産者を、それぞれ自ら探さなければならないが、生産・消費ともに多様化した今日では、それは不可能になっている。
(2)場所的調整機能とは、生産地と消費地が空間的に遠隔である場合、生産地から消費地へ財貨を運搬して消費者に提供する機能である。農・林・漁業のような第一次産業は、自然的条件によって生産地が規定されるから、それらの生産物にとってこの機能は本来的に必要である。工業についても生産本位の立地の比重は圧倒的であり、消費地との距離は遠くなる傾向にあるから、やはり事情は同じである。国際貿易は、この機能の国境を越えた現れである。
(3)時間的調整機能とは、農産物のように季節的に生産されて一年中消費されるものや、その反対に一年中生産されて季節的に集中消費される燃料や化学肥料のような財貨について、生産と消費の時間的な隔たりを、貯蔵(保管)によって円滑に媒介し、生産と消費の利害を両立させる機能である。
(4)数量的調整機能とは、大量生産された財貨を少量の小口消費単位に逐次分割したり、農産物のように分散して少量ずつ生産された財貨を逐次集荷によって大口の取引単位にまとめあげたりする機能である。
(5)品質調整機能とは、生産者の供給する財貨と消費者の希求する財貨の内容について、品種や品質の多様性を一定の基準によって整理し、選別し、等級をつけるなどして相互に調整する機能をいう。このため、財貨の形状・寸法・外観・成分・作用などによって格付け等級化を行い、需給関係を円滑化する。また商品の種類によっては、選別や混合が行われる。
 以上のように、商業の機能を五つの機能でとらえる立場は、どちらかといえば伝統的である。これに対して、比較的新しい立場には、商業の本質的機能をマーケティングに求め、その内容を交換機能、物的供給機能および補助的促進機能に三分する説もある。この説によれば、第一の交換機能とは、需要創造である販売と供給創造としての買い集めのための購買からなる。販売の目的は、売り手がもっている財貨を有利な価格で販売しうるような市場ないし需要を発見して、そこに財貨を供給することであり、購買の目的は、消費者の求める種類・品質・数量の条件を満たす財貨を妥当な価格で取得し、適当な時期と場所で消費者に供給することである。第二の物的供給機能とは、生産者から消費者に実体としての財貨を移転することであり、運送と保管とがその主内容になる。運送は生産地から消費地まで生産物を物理的・空間的に移動することであり、保管とは生産の時期から消費の時期まで生産物を時間的に保持することをいう。運送と保管により生産物の価値が高まるところに、商業の存在理由がある。
 以上の二つの機能は、伝統的理解の五つの機能と内容的に等しい。第三の補助的促進機能は、マーケティングに不可欠な金融、危険負担および標準化を内容としている。ここでいう金融とは、生産者に資金を融通したり代金を前払いし、あるいは消費者に掛売り、分割払いなどの形で信用を供与することによって、生産と消費を円滑に連結しそれらを助成することをいう。危険負担とは、市価の変動、流行遅れ、火災、沈没、変質、目減りなど流通過程で生じる損失を負担し、あるいはそれらの危険を拡散させることであり、保険がその具体的な方法となる。標準化とは、前述の品質調整(機能)に等しく、多様な品種や品質を一定の基準によって整理し、選別し、等級をつけることなどをいう。[森本三男]

商業の種類


直接商業の種類
経済の進歩に伴う商業活動の広範囲化により、商業機能の専門分化が生じる。その基本は、直接商業における小売商と卸売商の分化である。
 小売商は、流通経路の末端に位置し、最終消費者に直接に対面して財貨の販売を行う。その機能には、(1)消費者の需要する財貨を消費者の求める時と場所で供給する、(2)大口の財貨を小口の消費単位に分割する、(3)掛売り・配達・アフターサービスなど、消費者に対し種々のサービスを提供する、(4)広告・宣伝などにより財貨に関する情報を消費者に提供し、他方、消費者のニーズに関する情報を生産者にフィードバックする、などがある。小売商の形態別種類としては、よろず屋、単位商店、専門店、百貨店、チェーン・ストア(連鎖店)、通信販売、無店舗販売、消費組合、日用品小売市場、スーパーマーケット、コンビニエンス・ストア、露天商、行商(訪問販売)などがある。
 よろず屋は、多種類の日用財貨を少量ずつ無体系に販売する小売商である。単位商店はまた独立小売店ともよばれ、特定の種類の財貨を販売するもっとも普通の小売商である。肉屋、八百屋(やおや)、薬屋などがこれである。単位商店のうち、高級品や流行品に焦点をあてた財貨を扱うものを、とくに専門店とよんで区別する。毛皮店、宝飾店などはこの例である。
 百貨店は、多種類かつ大量の財貨を体系的に部門化して陳列し、広壮な建物、近代的な販売方法(陳列販売、正札販売、不満足品の引き取りまたは取り替え、無料配達、品質保証、案内所設置など)、および付帯施設(劇場、展示会場、娯楽設備、食堂など)を完備して、大量販売を行う小売商である。
 チェーン・ストアは、多数の小売店舗が統一的戦略のもとに管理され、仕入れと保管を集中する効果および分散販売する効果を統合しようとする意図をもった小売商である。全店舗が一企業の所有下にあるものをレギュラー・チェーン(正規連鎖店)、多数の独立店舗の連合体であるものをボランタリー・チェーン(任意連鎖店)という。また、特定の商品についてフランチャイズ(特権)をもつ親企業(フランチャイザー)が、チェーンに参加する独立店(フランチャイジー)に対し地域的独占販売権を与え、各種の指導・サービスを提供し、その反対給付として特約料を徴収するようなものをフランチャイズ・チェーン(契約チェーン)という。
 通信販売は、新聞、雑誌、ラジオ、テレビジョン、カタログ、ダイレクト・メールなどで広告し、遠隔地に散在する消費者から電話、郵便、電子メール、ファクシミリなどで注文を受け、財貨を配送する小売り方法である。無店舗販売は、店舗を特定して保有せず、一定期間だけ集会場・ホテルなどを借用して客を集め、商品を販売する方法である。通信販売をこれに含めることもある。
 消費組合は、消費者が自己の必要とする日用生活品を協同で安価に入手するために組織する非営利・互助的な小売商である。日本では、消費生活協同組合(生協)の形態をとる。日用品小売市場は、公設の建物の中に多数の小売店舗を収容し、公的な管理・監督の下に日用品を主体にした商品の販売を行わせるものである。
 スーパーマーケットは、食料品や日用品を中心にしたセルフサービス、現金販売、廉価販売を原則とする大規模小売店である。衣料品の比重の高いものをとくにスーパー・ストアということもある。大手スーパーマーケットのことを量販店とよぶこともある。スーパーマーケット形式ではあるが、大規模店では提供できない便利さ(コンビニエンス)を提供する小型のものをコンビニエンス・ストアという。ミニ・スーパーと俗称されることもある。その便利さとは、立地(交通至便)、時間(年中無休・24時間営業)、品ぞろえ(必要度の高い日用品に集中)などをいう。
 露天商は、道端や広場などに商品を並べて販売する形式であり、行商(訪問販売)は、商人(販売員)が家庭や職場を巡回して商品を勧誘し販売する形式をいう。
 小売商の動向は、量販店の隆盛とそれに連動して考えられる質販店の必要に集約される。スーパーマーケットや家庭電器専門店のような量販店は、大量廉価販売で生活と文化を改変し、商業に革新をもたらしたが、同時に多くの問題をも生み出した。生活と文化の面では、量的向上に寄与したが、その一段落とともにやがて消費者の質的志向を生み出し、量販店自体の方向転換が求められるようになった。それは、商品の品質重視、他店との差別化のための個性強調である。他方、百貨店を圧倒したスーパーマーケットが、百貨店に近い特性を追うような現象がみられるようになった。このような傾向を表現して、質販店という用語も現れてきた。もう一つの問題は、量販店などの新種小売商の台頭による既成秩序の混乱であり、これに対応して「大規模小売店舗立地法」(略称大店立地法、平成10年法律第91号)、「特定商取引に関する法律」(略称特定商取引法、昭和51年法律第57号)などが整備されている。
 卸売商は、小売商以外の直接商業をいう。卸売商もまた経済の発達とともに分化するが、その内容は流通する商品の種類に左右され、一様ではない。一般に用いられる卸売商の分類としては、収集卸売商、中継(なかつぎ)卸売商、分散卸売商に三分する機能的分類法がある。
 収集卸売商とは、産地問屋・産地仲買人のように、生産地にあって財貨の収集を行うものをいう。中継卸売商とは、都市問屋のように、集散地にあって財貨の収集と分散を媒介的に結合するものをいう。分散卸売商とは、消費地にあって小売商に対し財貨を供給するものをいう。この分類の場合、最後の分散卸売商のみが卸売商と解されることが多い。
 卸売商の第二の分類方法は、流通経路上の地位に応じて、販売代理店としての卸売商、中央卸売市場の卸売商、仲(なか)卸売商、輸出入商としての卸売商に四分するものである。販売代理店としての卸売商は、元(もと)卸売商ともよばれ、製造業者の生産物を一手に引き受けて、主として仲卸売商に販売する。中央卸売市場の仲買人は大口の取引をする卸売商とみなすことができるが、その中心機能は公正な価格の形成である。仲卸売商は、元卸売商から仕入れて小売商に販売するもので、一般にいう卸売商はこれである。輸出入商(貿易商)は、大口の財貨を国内で仕入れて外国へ販売し、あるいは外国で仕入れて国内で販売し、場合によっては第三国間で仕入れ販売を行う一種の卸売商である。[森本三男]
間接商業の種類
間接商業は、商品売買活動を円滑に行わせるための機関商業と、財貨売買業および機関商業をさらに支援する商業助成機関とからなっている。
 機関商業には、金融業、証券業、保険業、運送業、倉庫業、通信業、情報処理業がある。金融業は証券業とともに財貨流通に必要な資金の供給と取引関係の為替(かわせ)・決済に寄与する。なお機関商業としての証券業には証券取引所も含まれる。保険業は、財貨流通に伴う各種の経済的危険をカバーする。運送業は倉庫業とともに、財貨の物的流通を担当し、商業の場所的調整機能および時間的調整機能を現実に遂行する。なお、機関商業としての倉庫業は、自家用倉庫を除く営業倉庫のみをいう。通信業は、財貨流通に必要な情報の送達・伝播(でんぱ)を担当し、商業機能を促進する。これには、電信・電話業はもとより、郵便・放送業も含まれる。1990年代の通信技術の発達と通信の自由化により、インターネットによって単に情報を送達するのみでなく、情報内容をニーズにこたえて加工して供給する付加価値情報ネットワークが急速に普及してきた。これらを情報処理業とよぶことがあるが、その内容はまだ流動的・弾力的である。[森本三男]
商業助成機関
広義の商業全体の改善・発達を図るための機関である。業者団体、商工会議所、商工会、商業興信所、商工指導所、商品陳列館、物産館、見本市、商品検査所、日本貿易振興機構(ジェトロ)などがこれである。これらのうち、商工会議所、商工会、商工指導所、商品検査所の一部、ジェトロは公的な機関である。たとえば商工会議所は、原則として市を地区とする商工業者の非営利法人組織で、商品や事業内容の証明・鑑定・検査、輸出品の原産地証明、見本市の開催・斡旋(あっせん)、商事取引の仲介・斡旋、取引紛争の斡旋・調停・仲裁、相談・指導など、広範に商業活動を支援する。[森本三男]

商業の発達

商業の原始形態は交換であるが、原始時代、古代のそれは、かならずしも有償・等価とは限らず、互恵(贈与)、再配分(獲得物分配)、市場流通の三者があったが、第三のものが商業の直接源流になる。経済的余剰と希少性とが生じると、部族内から部族間へ交換が広まる。西暦紀元前、すでにフェニキア人、アラビア人、シリア人、ユダヤ人などは、ぶどう酒、オリーブ油、織物、貴金属などの通商を行っていた。その後、ギリシア・ローマ時代には、地中海沿岸で活発な貿易通商が展開され、各地に市(いち)が開かれるようになる。
 中世のヨーロッパ経済は、荘園(しょうえん)を軸にして動いた。荘園は、王・貴族・僧院の自給自足経済体であるが、荘園間の交換として商業が営まれた。商人はバイキングなど外国人が主であったが、王の統制下にメッセ(大市)などの市場を開設し、独占的営業の特権を与えられる代償として税を納めた。当時の商業は主として、商人が運送業者とくに回漕(かいそう)業者や資本主と協力する形がとられ、基本的には小売商であった。
 中世末期、イタリアは東洋貿易の中心として栄え、フッガー家のような富豪を多数生み出した。彼らの活躍は、従来の生業・家業的生活原理にたつ商業から、営利追求を中心にした収益性原理にたつ商業への脱皮を促す。これとともに、社会への寄生的存在とみなされてきた商業が、生産的機能をもつ産業として正当に評価されるようになっていった。このような思想が国家の政策に結び付いたとき、重商主義(マーカンティリズム)となって現れる。それは、輸出を奨励して輸入を抑制し、正貨を蓄積することが国益になるとの商業重視主義である。
 重商主義の展開のためには、フランスのコルベールに典型的にみられるように、外貨獲得のため貿易収支を改善することを意図した国内産業の振興が必要であり、その一環として商業もまた大きく変容する。その最大のものは、小売業と卸売業の分化である。それまで主として運送業者が担当してきた小売業は、財貨の集積・分散や流通の危険負担をもっぱら担当する卸売業の出現により、小売業に純化する。卸売業もまた、問屋や仲立人などに専門化していく。このような商業の分化による発達を促した大きな要因は、従来の組合組織にかわる会社、とくに株式会社の普及であった。
 産業革命は、経済の主導権を商業から工業に移行させたが、工業生産力の飛躍的増大により、商業自体も発展することになった。商業は一方で小売商の多様化など水平的に特化を進め、他方で卸売商の多層化など垂直的に分化を深めていった。小売業についてみると、よろず屋から単位商店への脱皮が進み、一部には専門店も現れてくる。とくに重要なことは、19世紀中葉の欧米における百貨店の出現であり、これにより近代的商業が幕開きを迎えることになる。
 産業革命はまた多数の貧困労働者を生み出すが、彼らの生活自衛組織として消費組合が現れる。その最初はイギリスのロッチデールの消費組合(1844)である。さらに20世紀に近づくと、通信販売店が登場する。通信販売店として出発し、その後チェーン店方式の百貨店として巨大小売商となったシアーズ・ローバックは有名である。チェーン店そのものが広く普及するのは20世紀10年代以降である。
 第二次世界大戦後、流通革新が幅広く進行し、スーパーマーケットを中心にした量販店が商業の代表的形態になったが、豊かさに伴う人間欲求の多様化は、多種類の商業形態の存在の肯定と質中心への移行を求めている。
 20世紀末の情報技術(IT)の急速な発展は、インターネット上の「市場」の開設のような、旧来の概念では説明・整理のできない商業を生み出した。[森本三男]

日本の商業


商業の発生
商の大和(やまと)ことばは「あきない」であり、秋の収穫物の交換を語源とする。社会的交換は、最初の主要産業であった農業の進歩により余剰生産物が生じたときに始まったと考えられる。その時代は明確ではないが、『魏志倭人伝(ぎしわじんでん)』(3世紀後半)には市(いち)の存在が記され、『日本書紀』(7~8世紀)にも市が大和などで開かれていたことが示されている。これらの事実から商行為が市の形態をとって始まったことは確かであり、その理由として、交換を公衆の集まるなかで有利に行うためと考えられる。大化改新(7世紀)により、市は制度化され、藤原京、平城京、平安京に東西の市が、地方国府にもそれぞれの市が設けられた。これらの市は、主として政府が、租(農作物で納める税)、庸(同じく布)、調(同じく地方特産物)で収納した物品をさばき、あるいは貴族が給与の余剰を処理するためのものであって、商業が本格的に成立したとはいいがたい。鋳造貨幣の最初は708年(和銅1)の和同開珎(わどうかいちん/わどうかいほう)であるとされているが、流通は十分でなかった。そのことが商業の本格的な成立を遅らせた一因ともいえるが、都から地方へ商品を流通させる行商人が現れたことは注目される。平安時代に入ると、荘園制が発達し、地方の開発が進んで、市は広く各地に普及するようになった。[森本三男]
市と座の商業
鎌倉時代から戦国時代に至る中世に、商業は本格的に業として成立する。その基盤は、市と座である。まず市は日帰り行程の地域圏に族生するとともに、定期市になり、かつ開催日数が増えて常設市に近づく。これに関連して定住店舗が現れ始める。市を足場に、農閑副業の商人が生まれ、商品経済を地方に浸透させていった。さらにこのような商業を発展させるのが、座とよばれる特権的同業者集団である。座と商業との関係は、公家(くげ)や社寺の座が余剰の処理について特権を与えられたことに始まり、ますます盛んになった行商人がこれらの座に加わり、商人自らが独自の座を形成する形に発展した。座の特権には、営業課税免除、特定物資の専売権、一定地域の行商権などがあった。戦国時代に近づくと、公家・社寺に隷属する座から商人のみで結成する座への脱皮が生じ、さらに各種の業種別、職種別の座も現れてくる。このような動きにつれて、生産と流通の分離、問屋(といや)と小売りの分離、生産者に対する問屋制前貸制度など、商業の機能分化が進行した。商圏の拡大が顕著になり、市や定住店舗は都市や大集落に集中し、とくに近畿では、京都、奈良、天王寺(てんのうじ)、堺(さかい)を拠点とする一種の広域市場が形成されるようになった。座はその特権とさまざまな形での相互作用によって、広域市場を動かしていた。やがて、座による市場支配は戦国大名による領国内の産業振興と利害が衝突するようになり、織田信長と豊臣秀吉(とよとみひでよし)による楽市・楽座令により解体させられるに至る。[森本三男]
近世都市商業
信長と秀吉による兵農商業分離政策と江戸幕府による幕藩体制は、城下町に都市商業を繁栄させることになった。これに幕府による江戸・大坂・京都の三大都市と各城下町とを結ぶ全国的商業網の展開が加わって、各藩の都市商業が全国的流通の結節点として機能するようになった。具体的には、諸藩の蔵(くら)屋敷の年貢米の集中と換金、生活必需品の集散、高級工業製品や原材料の調達と供給などであり、問屋と小売りに分化した商人が、これらの機能を担っていた。彼らの活躍の場である市場(いちば)は、小売市場から卸売市場へと広がり、さらに現物市場のみでなく、大坂の米市場にみられるように、銘柄(めいがら)による先物(さきもの)投機市場へと発展する。このような市場の広がりは、問屋による流通支配を生み出し、商工業者による株仲間の中心的役割を問屋が担うことになった。しかし、鎖国による工業の遅れのため、問屋が産業資本に転化することはなく、せいぜい問屋制家内工業の段階にとどまるだけであった。[森本三男]
近代的商業の展開
明治維新による幕藩体制の崩壊は、蔵屋敷、株仲間など近世商業を支える柱を取り払い、一時的に商業は衰退する。しかし明治中期以後、工業化が進行するにつれ、工業生産に原材料を供給し、その製品を内外に大量に流通させるための近代的商業が必要になり、政府もまたこのための施策を講じたため、商業は再生する。近代的である理由として、商業の担い手が会社企業によっていること、商業機能の内容が商品流通を中心に、各種補助商業(金融、保険、倉庫、交通、通信など)と有機的に結合したものになったこと、外国貿易を含む市場の飛躍的拡大が生じたことがあげられる。また、商業を円滑に機能させるための法律が整備され、これに基づいて取引所や中央卸売市場が整備され、従来は小規模生業が主体であった小売業にも百貨店のような大規模店が出現するようになった。日本では欧米に比して約半世紀遅れて現れた、三越(みつこし)(1904)、高島屋(1907)、松坂屋(1908)、松屋(1908)、大丸(1908)など旧呉服店系の洋風百貨店である。こうして、日本にも近代的商業が定着する。[森本三男]
『岡本喜裕著『現代商業学』増訂第2版(2003・白桃書房) ▽久保村隆祐編『商学通論』7訂版(2009・同文舘出版) ▽藤田貞一郎・宮本又郎・長谷川彰著『日本商業史』(有斐閣新書)』

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世界大百科事典内の商業の言及

【商業資本】より

産業資本,銀行資本とともに資本主義経済を支える最も重要な資本の運動形式の一つである。産業資本,銀行資本がそれぞれ生産,金融領域で活動するのに対して,商業資本は商品流通の領域(市場)で機能する。商業資本の活動は商品の購入と販売を2契機とし,そこで生じる売買差額が商業利潤の基礎になる。…

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