中世都市(読み)ちゅうせいとし

百科事典マイペディア 「中世都市」の意味・わかりやすい解説

中世都市【ちゅうせいとし】

中世末期,城砦(じょうさい)(ブルク),教会,市を起源として成立した西欧の都市。城壁,教会,市場,広場という共通の外観をもつ。特に11〜13世紀,ヨーロッパ北西部や北イタリアに発達。農業生産力が上昇して余剰農産物の商品化が進み,商人,次いで手工業者の集団が特定地点に定住し,王侯庇護(ひご)の下に発達した。商品経済の中心である点で古代都市と,政治的特権を享受する点で近代都市と異なる。周辺農村とは峻別(しゅんべつ)された特殊法(都市法)域をなすが,自治の度合は時と所により異なり,北イタリアでは都市国家に発展した。市政と商工業ギルド実権は遠隔地貿易商が掌握。西欧における〈市民〉意識形成に大きな役割を果たした。→自由都市
→関連項目都市バラ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中世都市」の意味・わかりやすい解説

中世都市
ちゅうせいとし
medieval city

中世に成立し繁栄した都市。ヨーロッパでは 10世紀頃から封建領主の居城や教会,市場,港湾などを中心として都市が発達したが,特に城郭都市はその典型である。これらの都市のほか,商工業や交通などの発達に伴って栄えた商工業都市の自由都市もある。イタリアのジェノバ,ベネチア,ミラノ,ドイツのブレーメンリューベックなどはその例。日本では鎌倉時代以後,安土桃山時代にいたる間に発達した都市で,幕府の所在地の鎌倉のほか,全国各地に寺内町港町宿場町,市場町などがある。

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旺文社世界史事典 三訂版 「中世都市」の解説

中世都市
ちゅうせいとし

ヨーロッパの「商業ルネサンス(商業の復活)」の時期,10〜12世紀に成立した都市
荘園における農業生産力の向上,商品生産の発展,手工業者の専門化がその背景をなし,都市が地域経済の中心となり,さらに遠隔地貿易の場となった。商人と手工業者である市民は,経済活動に対する封建領主の束縛を排除しようとして,自治権を要求した。特許状の獲得,都市法の制定,都市内部での身分制約の解除,自衛のための城壁がそれである。イタリア・ドイツでは,都市同盟を結んで封建諸侯と対抗した。その後,王権による中央集権化の進展とともに,近代都市に変化した。

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世界大百科事典(旧版)内の中世都市の言及

【住居】より

…敷地は南北1km,東西600mほどで,このなかに池を多用したさまざまな建築物を建てた。
【西欧】

[中世都市住居の新形式]
 ヨーロッパでは中世都市の発展によって,11~12世紀ころに新しいタイプの住居が現れてくる。都市内の住居(町屋)は木造で,1階に店舗等をもち,上階に居住部分をもった。…

【都市】より

…その基本的な特色は,地主的戦士の集住を契機に成立したものであり,農業生産は奴隷制に,商工業は多様な付庸の民や異邦人に依存する,いわば消費者的市民を構成メンバーとするものであった。したがって農村とは別個の法的地位を占め,商工業,ときに農業をも営みとする広義の生産者的市民を主体とした自治的な中世都市とも根本的に違った性格をもっていた。 このような都市国家は,ほぼ3世紀以降にみるローマ帝国の政治的不安と経済的衰微,つづく4世紀末以降のゲルマン人の移動侵入により,漸次その性格を変えた。…

【ヨーロッパ】より

…そのため船舶による河口からの遡行距離がきわめて長く,河川による交通は陸路をしのぐものがあった。古代の沿海文化が中世の内陸文化に移行しても,河川に沿った無数の中世都市が交易の拠点となりえたのである。
[人文地理的概念――三つの地域]
 次に人文ないし歴史地理学的に考えてみると,ヨーロッパは大きく分けて次の三つの地域にまとめることができる。…

※「中世都市」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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