日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポリネシア諸言語」の意味・わかりやすい解説
ポリネシア諸言語
ぽりねしあしょげんご
太平洋のハワイ、ニュージーランド、イースター島の3点を結ぶ海域に点在する島々に住むポリネシア系の人々によって使用される40余りの言語の総称。話者人口は推定約60万。オーストロネシア語族、東マライ・ポリネシア語派のうち、ロトゥマ、フィジーの言語とともに「遠隔オセアニア諸語」の「中央太平洋言語群」に属する。ポリネシア諸言語には二つの分派がある。その一つ「トンガ語群」はトンガ、ニウエの言語からなる。もう一つの「核ポリネシア諸語」はさらに二つに分かれる。「サモア・離島語群」は東西両サモア、ツバル(エリス)、プカプカなどの言語、メラネシアとミクロネシアに散在する「ポリネシア離島群」(レンネル、ティコピア、西ウベア、シカヤナ、カピンガマランギなど)の言語を含む。他の「東ポリネシア語群」は東のラパヌイ(イースター)、中央のタヒチ、パウモツ(ツアモツ)、マオリ(ニュージーランド)、マルケサス、ハワイなどの言語を含む。これらの言語群は広大な地理的広がりにもかかわらず、音韻、文法、語彙(ごい)のすべての面で高度の統一性を保っている。ポリネシア祖語はa, e, i, o, uの5母音(長短の別あり)と、p, t, k, ʔ(声門閉鎖音)、f, s, h, m, n, ŋ, l, r, wの13子音をもっていたと推測されるが、比較的保守的なトンガ語で12子音、現代ハワイ語で8子音となっている。離島の言語にはpw, mbなどをもつものもある。音節は基本的に〔(子音)+母音〕であり、単語は開音節で終わる。オーストロネシア祖語およびオセアニア祖語の語形の末尾の子音がポリネシア諸言語では失われている(例:*tales→*(n)talo(s)→*talo→ハワイ語kalo「タロイモ」)。基本的語順を「動詞+主語+目的語」とする言語が多い(ハワイ語Aloha ‘o Kū iā-ia〔愛する は クー を‐彼女〕「クーは彼女を愛する」)。文法関係は名詞、動詞に前置される小詞によって表され、修飾語は多くの場合被修飾語のあとに置かれる。名詞の数は冠詞の形あるいは語形の重複によって表す。所有、受動表現に興味深い特徴がある。サモア語には敬語表現が存在する。
[杉田 洋]