化学辞典 第2版 「ポロニウム化合物」の解説
ポロニウム化合物
ポロニウムカゴウブツ
polonium compound
ポロニウムの酸化数は-2,2,4,6であるが,通常,酸化数4で化合物をつくる.金属と酸素の反応で得られる赤色の立方晶PoⅣ O2は,80 ℃ で正方晶にかわる.塩酸溶液中の亜硫酸やヒドラジンによる PoⅣの還元で不安定な PoⅡ化合物も得られる.PoCl4を水素で還元するか,200~250 ℃ で熱分解するとルビー赤色のPoCl2が得られるが,きわめて酸化されやすい.酸化数-2のポロニウム化物(polonide)Na2Po,BaPo,ZnPoなど多数知られている.酸化数6のポロニウムは 210Po のα線による放射線分解のため,トレーサー量でしかその存在が確かめられていないが,Sr2PoO4,Ba4Po3O10などがポロニウム酸塩として報告されている.ポロニウム(Ⅲ)化合物の存在は疑わしい.溶液では,酸化数4のポロニウムは六配位錯体M2[PoX6](X = Cl,Br)をつくりやすく,加水分解しやすい.(NH4)2[PoCl6]は難溶性である.ポロニウム化合物は揮発しやすく,水素化物,カルボニル化合物は組成不明であるが,α放射体であるため危険である.ハロゲン化物PoⅡ X2,PoⅣ X4は塩化物,臭化物が知られ,PoX4はいずれも300 ℃ 付近で融解する.PoI4は200 ℃ で昇華する.また,吸着性も強い.ポロニウム化合物から金属ポロニウムを得るには,硫化ポロニウムPoSを低温,減圧で熱分解を行う.金属ポロニウムは銅とほぼ同等のイオン化傾向を示すので,ポロニウム化合物を含む溶液から容易に電解還元して金属が得られる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報