化学式H2SO3。水溶液としてのみ知られ,遊離の酸としては取り出すことはできない。二酸化硫黄SO2ガス(亜硫酸ガス)を水冷または氷冷下で水に通じて得られる。市販試薬の亜硫酸水は,SO2の含有量を6.0%以上とすることがJISに規定されている。無色透明の水溶液で刺激臭をもつ。酸性を呈する。二塩基酸で,酸解離指数pK1=1.76,pK2=7.19(25℃)。SO2含有量が23.7%(重量)以上の水溶液では12.1℃以上で2液相に分離する。強い還元剤であり,ハロゲン,過酸化水素などによって酸化されて硫酸H2SO4となる。
H2SO3+H2O⇄SO42⁻+4H⁺+2e
酸化剤としても働き,無機酸を加えると酸化力が強い。
4FeCl2+4HCl+H2SO3─→4FeCl3+S+3H2O
紫外線を長くあてたり,140℃以上の高温に加熱すると,次のような分解を起こす。
3H2SO3─→2H2SO4+S+H2O
大気中に放出された二酸化硫黄は浮遊粒子表面をおおった水に溶けて亜硫酸となり,これが光化学反応によって硫酸に変化するのが,著しい大気汚染をもたらす〈硫酸ミスト〉発生の原因とされる。また雨に溶けて亜硫酸となるのが酸性雨の原因でもある。亜硫酸塩は一般に無色で(たとえばNa2SO3・7H2O),水溶液は還元性を示し,また湿った空気中ではたやすく酸化されて硫酸塩となる。アルカリ金属の正塩および水素塩,たとえばNa2SO3,NaHSO3,K2SO3,KHSO3,(NH4)2SO3などは還元剤として広く用いられ,工業的に重要で写真の現像薬,食品,繊維などの漂白剤として用いられる。
執筆者:漆山 秋雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
H2SO3(82.08).二酸化硫黄の水溶液中に存在が仮定されている酸.実際は水和したSO2のみが存在し,H2SO3は単離されていない.水溶液中では,
SO2・2H2O HSO3- + H3O+
HSO3- + H2O SO32- + H3O+
の平衡が存在する.K1 1.4×10-2,K2 6.5×10-8.多くの安定な中性塩,酸性塩,およびエステルが得られている.モノエステルは不安定であるが,ジエステルOS(OR)2(たとえば,亜硫酸ジメチル)は安定で,スルホン酸エステルRS(O2)ORの異性体である.一般に還元剤として反応し,硫酸に酸化される.ただし,H2Sでは,硫黄に還元される.漂白に利用される.[CAS 7782-99-2]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
二酸化硫黄(いおう)の水溶液中に生成していると考えられる二塩基酸。普通H2SO3で表す。しかし実際にはH2SO3の生成は認められず、二酸化硫黄の水和物SO2・nH2Oであり、
SO2・nH2O―→HSO3-+H3O++(n-2)H2O
とするのがよい。亜硫酸溶液を蒸発しても遊離の酸は得られない。それは、溶けていた二酸化硫黄が蒸発の際、気体(二酸化硫黄)となって逃げていくからである。酸性は弱く、強酸により二酸化硫黄を発生する。強い還元剤として働き、酸素、ハロゲン、過酸化水素によって酸化され、硫酸となる。また、還元作用よりは弱いが、酸化剤として働くことがあり、自身は硫黄となる。還元剤のほか漂白剤としても用いられる。大気中に放出された二酸化硫黄は浮遊する水分と結合して亜硫酸を生成し、光化学反応などによって硫酸となり、大気汚染の原因となっている。
[守永健一・中原勝儼]
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