ポロニウム(読み)ぽろにうむ(英語表記)polonium

翻訳|polonium

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポロニウム」の意味・わかりやすい解説

ポロニウム
ぽろにうむ
polonium

周期表第16族に属し、酸素族元素の一つ。1898年フランスのキュリー夫妻によって、ピッチブレンドからラジウムとともに発見された放射性元素で、夫人の生国ポーランドにちなんで命名された。天然放射性系列にはポロニウムの七つの同位体が含まれるが、このときのものは半減期138.4日のポロニウム210である。ウラン238の崩壊生成物としてウラン鉱石中に存在するが、含有量はきわめて少ない(ピッチブレンドでも1トン当り0.1ミリグラム以下)。最近では原子炉内でビスマス中性子を照射し、次の核反応によってミリグラム程度の量でつくられる。


 中性子照射したビスマスの塩酸溶液に銀を入れると、イオン化傾向の差で銀の表面にポロニウムが析出する。これを真空昇華すると単体を得ることができる。銀色の光沢をもつ軟らかい金属で、低温でのα(アルファ)型(単純立方格子)、高温でのβ(ベータ)型(単純菱面体(りょうめんたい)格子)の二つの変態がある。化学的にはテルルおよびビスマスに類似している。ポロニウム210はα線源として用いられる。またベリリウムとの合金はγ(ガンマ)線の混ざらない中性子源として重要。

[鳥居泰男]



ポロニウム(データノート)
ぽろにうむでーたのーと

ポロニウム
 元素記号 Po
 原子番号 84
 原子量  (209)
 融点   254℃
 沸点   962℃
 密度   α;9.32g/cm3
      β;9.4g/cm3
 結晶系  α;立方
      β>54℃;三方
      固体,六方

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ポロニウム」の意味・わかりやすい解説

ポロニウム
polonium

元素記号 Po ,原子番号 84。周期表 16族,酸素族元素の1つで,天然放射性元素。 84番元素の存在は 1889年 D.メンデレーエフによって予言されていたが,98年キュリー夫妻によってピッチブレンドから発見され,M.キュリーの故国ポーランドにちなんでポロニウムと命名された。天然には,質量数 218,214のウラン系核種,215,211のアクチニウム系核種,216,212のトリウム系核種が存在するが,このほか 20種の人工放射性核種が知られている。単体は灰白色の半金属で,融点 254℃,比重 9.32 (α体) ,9.51 (β体) 。化学的性質はテルルおよびビスマスに類似している。ポロニウム 210はα線源として用いられる。

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