塩化物(読み)エンカブツ(その他表記)chloride

翻訳|chloride

デジタル大辞泉 「塩化物」の意味・読み・例文・類語

えんか‐ぶつ〔エンクワ‐〕【塩化物】

塩素と、それより陽性の元素または原子団との化合物

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精選版 日本国語大辞典 「塩化物」の意味・読み・例文・類語

えんか‐ぶつエンクヮ‥【塩化物】

  1. 〘 名詞 〙 塩素と、塩素より陽性な元素との化合物の総称。希ガス元素以外のすべての元素の塩化物が知られ、塩素が負一価の状態で含まれている。アルカリ金属など陽性元素との塩化物はイオン結晶水溶性非金属元素との塩化物は一般に分子性で、常温気体または液体。〔稿本化学語彙(1900)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化物」の意味・わかりやすい解説

塩化物
えんかぶつ
chloride

塩素と、塩素より陽性な元素または基、多原子団などとの化合物の総称。たとえば金属元素との間では、塩化ナトリウムNaCl、塩化カルシウムCaCl2、塩化アルミニウムAlCl3塩化チタン(Ⅳ)TiCl4などのように、また非金属元素とは、塩化水素HCl、二塩化硫黄(いおう)SCl2、三塩化リンPCl3、四塩化炭素CCl4などのように、一般式AClnnは正の整数)で表される。また各種の基や原子団では、たとえば、塩化メチルCH3Cl、ジクロロメタンCH2Cl2、ヘキサアンミンコバルト(Ⅲ)塩[Co(NH3)6]Cl3などがそうである。

 一般に金属の塩化物は、金属酸化物水酸化物炭酸塩などを塩酸に溶かして得られる。また元素単体と塩素との反応によっても得られ、とくに遷移金属の塩化物の無水和物は直接反応によらなければ得られないものが多い(たとえば塩化クロム(Ⅲ)CrCl3など)。陽性の強い元素、たとえばアルカリ金属、アルカリ土類金属などの塩化物(たとえば塩化ナトリウムや塩化カルシウム)は、無色のイオン結晶が多く、水に溶けて水溶液は中性遷移元素など陽性の比較的弱い元素の塩化物(たとえば塩化チタン(Ⅳ)や塩化クロム(Ⅲ))は、かなりの共有性を有し、層状格子あるいは分子格子からなるものが多い。またそれらの塩化物の水和物は、多くの場合アクア錯塩である。たとえば塩化アルミニウム六水和物AlCl3・6H2Oは[Al(H2O)6]Cl3、塩化ニッケル(Ⅱ)六水和物NiCl2・6H2Oは[NiCl2(H2O)4]・2H2Oである。

 非金属元素の塩化物は直接反応させるか、酸分解によって得られ、多く共有結合性の分子からなり、揮発性であり、常温で気体ないし液体であることが多い。水には不溶、あるいは加水分解されて塩酸と非金属元素のオキソ酸を生ずる。たとえば
PCl3+3H2O
―→3HCl+H2PHO3
 また有機溶媒には溶けやすい。一般に水に溶けるものは、硝酸銀によって塩化銀の白色沈殿を生ずる。

[中原勝儼]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩化物」の意味・わかりやすい解説

塩化物
えんかぶつ
chloride

塩素と他の元素あるいは基との化合物の総称。希ガスを除くほとんどすべての元素は塩化物をつくる。金属の塩化物は金属あるいはその水酸化物,炭酸塩,酸化物に直接塩酸を作用させて得られることが多い。金属塩化物は少数の例外を除き,一般に水,酸に可溶であるが,ある種の金属の塩化物は加水分解しやすい。非金属元素の塩化物には共有結合化合物が多い。金属塩化物の水溶液中に生じる塩化物イオン Cl- は硝酸銀の作用により白色沈殿 AgCl を生じる。この沈殿はアンモニア水,チオ硫酸ナトリウム溶液に易溶なので,水に可溶な金属塩化物が容易に検出される。

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化学辞典 第2版 「塩化物」の解説

塩化物
エンカブツ
chloride

塩素と塩素より陽性な元素または基との化合物の総称.ほとんどすべての元素が塩化物をつくる.金属あるいはその酸化物,水酸化物,炭酸塩に塩酸を加えるか,または塩素と元素の直接反応,複分解などによりつくられる.陽性の強い元素の塩化物は無色のイオン結晶をつくる.銅(Ⅰ),銀,金(Ⅰ),水銀(Ⅰ),タリウム(Ⅰ),金(Ⅱ)および白金(Ⅱ)の塩化物は水に難溶で,その他の塩化物は可溶.とくにリチウム,マグネシウム,カルシウムの塩化物は潮解性で水によく溶ける.水溶液中で塩化物イオンが金属に配位したクロロ錯イオンをつくることが多い.非金属元素の塩化物の多くは,共有結合性の気体または揮発しやすい液体である.

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改訂新版 世界大百科事典 「塩化物」の意味・わかりやすい解説

塩化物 (えんかぶつ)

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岩石学辞典 「塩化物」の解説

塩化物

(1) 化学的堆積物で,ナトリウム,カリウム,マグネシウムの塩化物の塩からなるもの.(2) 銀を含む鉱床の探査用語にも用いる[Hatch, et al. : 1938].

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栄養・生化学辞典 「塩化物」の解説

塩化物

 塩素より陽性な元素と塩素の化合物.塩化ナトリウムなどはイオン性の化合物.非金属元素の塩化物は共有結合性である.

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世界大百科事典(旧版)内の塩化物の言及

【塩素】より

…単体の塩素気体が黄緑色であることから,ギリシア語のchlōros(黄緑色)にちなんで命名された。天然には遊離状態では存在せず,火山ガス中に塩化水素HClとして,海水や岩塩中に塩化物などの形で含まれる。多くの生体中にも含まれ,たとえばヒトの胃酸中にはHClとして存在する。…

【ハロゲン化物】より

…フッ(弗)化物,塩化物,臭化物,ヨウ(沃)化物およびアスタチン化物の総称で,ハロゲン元素とそれよりも電気陰性度の小さい元素との化合物をさす。ハロゲン元素どうしの化合物はとくにハロゲン間化合物と呼ばれ,またハロゲン化物(ハロゲン間化合物を含む)とハロゲンとの付加物をポリハロゲン化物と呼ぶ。…

※「塩化物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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