日本大百科全書(ニッポニカ) 「マシンジャー」の意味・わかりやすい解説
マシンジャー
ましんじゃー
Philip Massinger
(1583―1640)
イギリスの劇作家。オックスフォード大学に学んだのち、ジョン・フレッチャーらとの合作によって劇作を始め、主として国王一座(キングズ・メン)のために戯曲を書き、フレッチャーの死後は同一座の中心作家となった。合作を含めて50以上もの劇を書いた(33が現存、うち単独作は15)とされるが、なかでも『オセロ』に似た悲劇『ミラン公爵』(1621ごろ)、シャイロックを思わせる高利貸のサー・ジャイルズ・オーバーリーチの活躍する風刺喜劇『旧債返却の新方法』(1625)などが有名。そのほか、悲喜劇『変節者』(1624)、悲劇『ローマの俳優』(1626)、喜劇『市の女』(1632)など、いずれも宗教や政治の問題の大胆な扱い方や流暢(りゅうちょう)な韻文を特色としているが、ことにその巧みな劇作術は末期のエリザベス朝演劇を代表するもので、やがて王政復古期に盛んになる「風習喜劇」を予感させる。
[村上淑郎]