マタブリ(英語表記)Simo Matavulj

改訂新版 世界大百科事典 「マタブリ」の意味・わかりやすい解説

マタブリ
Simo Matavulj
生没年:1852-1908

ユーゴスラビアの作家。クロアチアの生れ。聖職者になりきれず,修道院を逃亡,ザダルで師範学校に学ぶ。モンテネグロセルビアで中学教師をしながら短編長編を書き,モーパッサン,ゾラらの作品を翻訳した。長編《勢力者ブルネ修道士》(1892)は,ダルマツィア沿岸にあるフランシスコ会修道院の生活を描いたリアリズムの傑作だが,南国的なユーモアにあふれている。《ウスコック(義賊)》(1902)では,地方色豊かなモンテネグロ人の英雄的生きざまを賛美した。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のマタブリの言及

【ユーゴスラビア】より

…また19世紀中ごろロシアやフランスのリアリズムに影響されながら,クロアチアの過去を散文に再現したシェノア,セルビア随一の児童文学者ズマイ,スロベニアのユルチッチの活躍も注目される。世紀末にセルビアのラザレビッチLaza Lazarević(1851-91),マタブリスレマツ,クロアチアのノバックVjenceslav Novak(1859-1905)らが地方色豊かな日常生活を好んで描いた。 中世の歴史を通じて,ユーゴスラビア地域の南スラブ諸族はそれぞれ独自の言語をもつようになり,北からスロベニア語,クロアチア語,セルビア語,マケドニア語が話されるようになったが,19世紀に全体の70%以上を占めるセルビア語とクロアチア語が文語として統一されたことは,政治的にも重大な事件だった。…

※「マタブリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

ベートーベンの「第九」

「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...

ベートーベンの「第九」の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android