改訂新版 世界大百科事典 「マハーチャート」の意味・わかりやすい解説
マハーチャート
Mahachat
パーリ語の《布施太子本生経》(13巻1000偈)のタイ語版。《大生経》ともいう。ジャータカ(本生経)の中で最も文学的な部分である。〈大生〉とは釈尊が布施太子としての生を終えることにより,仏陀になる前の全十生を終えたことを祝っていうことば。1482年以来数回王命により訳されたが,現在は各巻ごとに名訳を選び集めた文部省版が最も有名で,教科書にもなっている。布施太子は請われると何でも布施するが,白象を与えて国を追われ,最愛の児女も与え,ついには妃まで布施した瞬間に大願成就,妻子も王子の手に戻る。旧10月末の布施節に各地の寺で13人の僧がこの経を1巻ずつ伴奏つきで読誦するのを1日で全部聴けば,非常な御利益があるとされる。寺は飾りたてられ,読誦する僧には美しく編んだ大籠に食料品などを詰めて献上する。
執筆者:冨田 竹二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報