改訂新版 世界大百科事典 「マーワラーアンナフル」の意味・わかりやすい解説
マー・ワラー・アンナフル
Mā warā' al-Nahr
アラブの侵入期およびアラブ支配時代(8~9世紀)にアラブがブハラ,サマルカンドを含むアム・ダリヤ以北のオアシス定住地帯を呼んだ名称。アラビア語で〈川(アム・ダリヤ)のかなたの地〉を意味する。西方世界でのこの地方に対する呼称トランソクシアナTransoxiana,すなわち〈オクスス川(アム・ダリヤ)のかなたの地〉と同義である。これに対し,シル・ダリヤ以北の遊牧地帯はトルキスタン,すなわちペルシア語で〈トルコ人の住地〉と呼ばれたが,10世紀末に始まるカラ・ハーン朝のマー・ワラー・アンナフル支配以後,この地方に徐々にトルコ人が流入して,従来ペルシア語の用いられていたこの地方をトルコ化した結果,現在ではこの地方をもトルキスタンと呼び,マー・ワラー・アンナフルという用語は,いわばこの地方に対する雅称として用いられている。
執筆者:間野 英二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報