日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミオゲン」の意味・わかりやすい解説
ミオゲン
みおげん
myogen
筋肉タンパク質のうちで純水にもっとも溶けやすいタンパク質の総称。ミオシノゲンmyosinogenともいう。硫安飽和度0.60~0.96で塩析され、飽和度によってA、B、Cに分けることがある。分子量は約8万~10万で、等電点は水素イオン濃度指数(pH)6.0付近のものが多い。肉漿(にくしょう)中に溶けた状態で存在し、解糖系を中心とした種々の酵素がこれに属する。かなりの割合で糖タンパク質であると考えられる。ウサギでは筋肉タンパク質の約20%がミオゲンで、残りは筋原線維(筋線維内に多数縦走する円筒状の微細構造)をつくっている。
ミオゲンは、20世紀前半に使われたが、現在では使われなくなった歴史的な術語である。タンパク質の単離精製が比較的困難な時代に使われた術語といえる。現在、筋肉の多くのタンパク質が各種の方法で単離精製されている。アクチン、ミオシン、トロポミオシン、トロポニンなど、それぞれに名称がついており、筋肉の分子構造の研究が進んでいる。
[野村晃司]