骨格筋にある調節タンパク質の一つ。トロポニンとともに骨格筋の収縮弛緩(しかん)を調節するタンパク質。イギリスの生化学者ベイリーKenneth Bailey(1909―1963)が1946年に発見し、1948年に結晶化した。アミノ酸284残基、分子量約3万4000のサブユニット二つ、αα(アルファアルファ)またはαβ(アルファベータ)の構成で、分子量約6万8000で存在する。ほとんどがα-ヘリックス(ポリペプチド鎖がとりうる安定な螺旋(らせん)構造の一つ)の細い棒状の分子で、幅1.5~2ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)、長さ40ナノメートルの大きさである。アクチンフィラメントのねじれた二重螺旋の溝に沿って1本ずつ結合し、その構造を安定化している。また、カルシウム受容タンパク質であるトロポニンと結合して、アクチンにカルシウム感受性を与え、アクチンとミオシンの結合を調節する。トロポニンとトロポミオシンの1対1の複合体は活性トロポミオシンとよばれ、これに7倍のアクチンが加わると細い筋フィラメントの組成になる。トロポニンはアクトミオシンATPアーゼ活性に、Ca2+感受性を与えるものとして江橋節郎(えばしせつろう)(1922―2006)・文子夫妻によって発見、単離された(1964)。分子量約7万5000のタンパク質でT、I、Cの三つのサブユニットからできている。なお、トロポとはギリシア語の変化、屈折を意味するトロポスからきた接頭語である。
[野村晃司]
『新井健一編『水産動物筋肉タンパク質の比較生化学』(1989・恒星社厚生閣)』▽『日本水産学会監修、西田清義編『魚貝類筋肉タンパク質――その構造と機能』(1999・恒星社厚生閣)』
筋肉細胞内の筋収縮を発現する筋原繊維を構成する二つのフィラメントのうち,細いフィラメントを構成している筋肉タンパク質.低塩濃度では重合体であり,塩を加えると単分子で存在する.分子量6×104,2本のαヘリックス鎖からなる二重らせん構造の,100% ヘリックスの長さ40 nm の棒状分子である.トリプトファンを含まないので,紫外吸収スペクトルがチロシンの吸収に一致することから純度が検定できる.アクチンフィラメントがトロポミオシンを囲んで配列し,さらにその長さの方向に40 nm 間隔でトロポニンが結合して,細いフィラメントが形成されている.トロポニンに結合した Ca2+ は,トロポミオシンを通じて,ミオシン,アクチンの相互作用に影響を与えていると考えられている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
筋肉の構造タンパク質。骨格筋をはじめとして平滑筋や無脊椎動物の筋肉にもひろく存在し,会合体を作りやすく容易に結晶化する。長さ40nmで分子量6万5000~7万の細長い棒状分子で,大部分がα-ヘリックス構造の2本のポリペプチド鎖から成る。これらの鎖は疎水結合で互いにつながり,二重らせんを形成している。アクチン繊維の二重らせんの溝の部分にはまりこみ,筋肉の細いフィラメントを形成している。
執筆者:宝谷 紘一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新