ミューズ細胞(読み)ミューズサイボウ(その他表記)Muse Cell//Multi-lineage differentiating Stress Enduring cell

デジタル大辞泉 「ミューズ細胞」の意味・読み・例文・類語

ミューズ‐さいぼう〔‐サイバウ〕【ミューズ細胞/Muse細胞】

multilineage-differentiating stress enduring cell》さまざまな組織細胞へと分化できる能力をもつ体性幹細胞の一。平成22年(2010)、出沢真理らが発見。もともとヒト骨髄真皮脂肪組織などに存在し、非腫瘍形成性のため、がん化のおそれがない。名称は培養組織に長時間のストレス処理を施すと濃縮されることに由来する。iPS細胞とともに、再生医療応用する研究が進められている。

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知恵蔵 「ミューズ細胞」の解説

ミューズ細胞

ヒトの骨髄などの間葉系組織にある多能性幹細胞。東北大学大学院医学系研究科細胞組織学分野の出澤真理教授らのグループが発見し、2010年に発表された。体のあらゆる組織に分化する能力をもち腫瘍(しゅよう)化するリスクが極めて低いとされ、損傷部位を修復する再生医療への応用が期待されている。
さまざまな細胞に分化する多能性幹細胞としてES細胞やiPS細胞が知られているが、ES細胞は受精卵ないしは胚盤胞(はいばんほう)までの発生初期の細胞から樹立するのに対し、ミューズ細胞は成人から採取できる点が異なる。また、iPS細胞はヒトから採取した細胞に数種類の遺伝子を導入して作製するが、ミューズ細胞はヒトの組織に存在し、指標を用いて単離することができるほか、強いストレスをかけることで効率よく得ることもできる。また、ES細胞やiPS細胞のように修復したい組織の細胞に分化誘導しなくても、ミューズ細胞は静脈から血中に投与するだけで組織を修復する。
ミューズ細胞は血中に投与すると、体内の損傷部位に移行し、その部位の細胞に分化して損傷した細胞を補う。ヒトの細胞を拒絶しない免疫不全マウスを使って急性肝炎、骨格筋変性、皮膚創傷、脊髄(せきずい)損傷を起こさせ、ヒトから採取したミューズ細胞を投与したところ、いずれも損傷した組織と結合して損傷した細胞へと分化した。17年7月には、慢性腎臓病のマウスにヒトのミューズ細胞を静脈投与したところ糸球体に生着し腎機能が改善したという研究成果が発表された。
発見した東北大学の出澤教授のグループでは、ミューズ細胞に関する基礎研究を進める一方心筋梗塞(こうそく)、肝疾患、脳梗塞、神経損傷、糖尿病、感覚器障害などでの臨床応用に向けた研究も展開している。

(石川れい子 ライター/2017年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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