出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
甲状腺ホルモンの分泌が低下して活動性が低下する病気です。圧倒的に女性に多く(男女比は1対10以上)、40歳以後の女性では軽症なものも含めると全体の5%にみられます。
成人に起こり、症状がはっきり出ているものは
原因により、甲状腺自体が損われて起こる
原発性機能低下症の原因としては、甲状腺の術後、アイソトープ治療後、甲状腺ホルモン合成障害などもありますが、圧倒的に多いのは
甲状腺ホルモンは、全身の代謝を維持するのに重要なホルモンです。このホルモンが低下すると活動性が鈍くなり、昼夜を問わず眠く、全身の
甲状腺は多くの場合はれていますが、
顔や手足がむくみやすくなるのは、ムコ
診断は、甲状腺機能低下症かもしれないと気がつけばあとは簡単で、採血して甲状腺ホルモン(遊離チロキシン:FT4)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測定します。
原因を調べるために、抗甲状腺抗体(抗Tg抗体、抗TPO抗体)の測定もよく行われます。
健診で行うような一般的検査では、コレステロールやクレアチンキナーゼが高値になるので、これをきっかけに甲状腺機能低下症が見つかることもあります。
甲状腺機能低下症の治療は簡単で、どのような原因でも甲状腺ホルモンの投与を行います。甲状腺ホルモンとして、昔は乾燥甲状腺末なども使われていましたが、現在ではサイロキシン(チラージンS)の錠剤で治療するのが一般的です。甲状腺ホルモン薬は食事や他の内服薬の影響をさけるために、寝る前に服用をするようにします。甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンを測定して、正常域に入ればあとはその量を長期に服用するだけで、薬の副作用が起こることはありません。
なお、橋本病による甲状腺機能低下症でも、回復して甲状腺ホルモンの服用が必要なくなることもあるので、定期的に検査をしながら中止できないかどうかを調べていきます。
甲状腺機能低下症を見つける簡単なチェックリストを示しておきます(表1)。これで甲状腺機能低下症の可能性があると思ったら、かかりつけ医あるいは内分泌・代謝科のある病院でFT4とTSHを測定してもらいます。
阿部 好文
甲状腺ホルモンは代謝を
甲状腺そのものの障害で起こる場合と、甲状腺を刺激するホルモンを分泌する脳のなかの
自覚症状は、活動性が低下し、寒さに対して弱く寒がりになります。また足がむくむなどの症状も起こり、元気がなくなってボーっとしているなど
さらに精神障害としては、成人では不活発な感情、思考力低下、記憶力・理解力・判断力の低下、抑うつ状態、幻覚、
臨床症状からこの病気を疑いますが、痴呆症との見分けがいちばん重要です。甲状腺機能低下症は、内科的治療が可能です。確定診断をするために甲状腺ホルモンの測定が行われます。鑑別診断するために下垂体ホルモンを測定することもあり、原因として免疫異常の機序(仕組み)が疑われる時には、各種の自己抗体も測定します。
甲状腺のがんなどを除外するため、甲状腺の超音波エコーなどの検査も行われます。
診断がつけば甲状腺ホルモンの補充療法を行い、治療により著明な改善が期待できます。
少しでも可能性があれば早急に受診し、検査を受けることが大切です。簡単な検査で診断できます。
栗山 勝
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
甲状腺ホルモンが足りないためにおこる疾患で、甲状腺機能不全ともいう。男女比は1対5くらいで女性に多い。原因としてもっとも多いのは、特発性といって自己免疫によるもので、次に多いのがバセドウ病に対して放射性ヨード療法を行ったのちにおこるものである。症状の第一は全身のむくみ(浮腫(ふしゅ))で、普通のむくみと異なり、指で押してもへこみが残らない。そのほか、皮膚が乾燥し、脱毛、全身倦怠(けんたい)感、食欲低下、便秘、かれ声、いびきなどがみられ、寒がったり、ゆっくり低音で話したりする。また、男性では性欲減退、女性では初期には月経過多、重症になると無月経がみられる。軽い例では上述の症状の一部が現れるにすぎない。また、小児に発病すると、成長が障害されて低身長症(甲状腺性低身長症)になる。胎児期または生まれてすぐに発病すると、肉体的にも精神的にも成長発育が著しく低下し、顔がむくみ口唇が厚く、鼻が低くて横に広がる特有な顔つきになり、知能低下の状態になる。これをクレチン症という。
診断としては、血中の甲状腺ホルモン(チロキシン、トリヨードチロニン)と甲状腺刺激ホルモンの測定が行われる。また多くの場合、血清コレステロールが高値を示す。治療は甲状腺ホルモン剤の服用が有効であるが、一生飲み続けなければならない。
[鎮目和夫]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…すなわち基礎代謝率の増加,体重減少,頻脈,発汗,疲れやすく暑さに弱い,多食,手指の振戦などが起こる。また甲状腺機能が不全となると,ホルモンの分泌が減少し,血中チロキシン濃度が低下し,甲状腺機能低下症の状態となる。元気がなく,寒さに敏感となり,体温は低下し,皮膚は冷たく,乾燥し,毛が抜けやすく,知的活動能力が落ち,徐脈,便秘,貧血,むくみなどが起こってくる。…
…甲状腺機能低下症hypothyroidismとほぼ同義に用いられるが,出生後早期に発症し,特有の発育障害を起こすクレチン病(クレチン症ともいう)は,別の疾患として扱われる。甲状腺機能低下症は,甲状腺からのホルモン分泌が減少し,血液中の遊離甲状腺ホルモン濃度が低下して,特有の臨床症状または生化学的変化を伴っている状態をさす。…
※「甲状腺機能低下症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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