改訂新版 世界大百科事典 「メノラー」の意味・わかりやすい解説
メノラー
menorah
ユダヤ教の典礼具の一つである多枝燭台。その原型は,神の命令によって幕屋(まくや)の聖所に置かれることになった純金の七枝の燭台である(《出エジプト記》25:31~35)。中央の幹の両側に三つずつ枝が伸びた形で,七つの燭火がともせるようになっていた。この形はエルサレムの〈第二神殿〉の聖所に置かれた燭台にひきつがれ,神との出会いの場所としての神殿の象徴ともなった。神殿が失われ,シナゴーグがおもな典礼の場所になってからも,メノラーは象徴的図像として壁画にしばしば表現された。原形と同じ七枝燭台の複製や模造は禁じられたが,それに類似した多枝燭台はシナゴーグや家庭での礼拝に用いられ,これらもメノラーと呼ばれた。それらのある物は金属工芸の逸品である。安息日の燭台点火はユダヤ教徒の家庭における重要な儀式で,燭台は神殿,すなわちユダヤ民族の統合を思いおこさせる象徴であり続けている。
執筆者:国谷 誠朗
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報