シナゴーグ(読み)しなごーぐ(英語表記)synagōgē ギリシア語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シナゴーグ」の意味・わかりやすい解説

シナゴーグ
しなごーぐ
synagōgē ギリシア語

ギリシア語で集合、招集の意。『新約聖書』では集会所(邦語聖書では会堂)の意で用いられる。その起源はかならずしも明らかでなく、『旧約聖書』にもその言及がない。おそらくイスラエル民族がバビロン捕囚(前587)ののち、エルサレム神殿において礼拝を守ることができなくなったので、彼らはそれぞれの離散の地に集会所を設け、そこで聖書を朗読し、それを説き明かし、祈りをすることによって自民族のアイデンティティ(自己同一性)を保ってきた。このようにシナゴーグは、当初から今日に至るまで、ユダヤ人のコミュニティ・センターの役割を果たしてきた。

 今日、シナゴーグには、宗教的儀式のために用いられる「集いの家」(ベート・ハ・クネセト)と、礼拝のみならず勉学のためにも用いられる「勉学の家」(ベート・ハ・ミドラシュ)との2種類がある。ユダヤ教の教え(ハラハー)によれば、前者は地域でもっとも高い建物でなければならず、同建物内での寝食を禁じられている。また、ときに礼拝堂では婦人席が別置されていることもある。後者は通常蔵書が多数あり、グループ学習ができるような設備がある。

[定形日佐雄]

『アラン・ウンターマン著、石川耕一郎・市川裕訳『ユダヤ人』(1983・筑摩書房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シナゴーグ」の意味・わかりやすい解説

シナゴーグ
synagogue

「集会」を意味するギリシア語 synagōgēに由来する名称でユダヤ教の会堂をさす。バビロン捕囚期に神殿を失ったユダヤ人が集って聖書を読み,祈祷する場所として建てた会堂に起源があるといわれる。一般に長方形のプランをもち,その一辺がエルサレムの方向を向き,内部にはトーラーを収める箱がある。現在までに発掘された最古のものはアレクサンドリア郊外にあった前3世紀のもの。1世紀頃にはローマ帝国各地に建てられた。以来現在にいたるまで,単に礼拝だけでなく教育や集会の場所として,世界中に散在するユダヤ人の社会的,宗教的生活の中心となっている。

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