日本大百科全書(ニッポニカ) 「メープルソープ」の意味・わかりやすい解説
メープルソープ
めーぷるそーぷ
Robert Mapplethorpe
(1946―1989)
アメリカの美術家。おもに写真で作品発表を行った。ニューヨークのプラット・インスティテュートで美術を学び、1970年代から身体をテーマにした作品を発表するが、80年代に入ってからは、その過激な表現で一躍世界的な名声を獲得することとなった。メープルソープは、従来はタブー視されていた同性愛的な美意識をあけすけに表現し、男性器をも含めて男性の身体を、性的嗜好(しこう)を根拠とする美学で表現し続けた。やがてその美意識は植物の花に向けられるという経過をたどった。その途中で性差を越えて、女性ボディビルダーの筋肉美を表現の対象としたり、歌手パティ・スミスPatti Smith(1946― )をパートナーとして作品をつくるなど、多彩な活動を展開するが、全体としては、ニューヨークにおける世紀末的耽美(たんび)主義の傾向が強く、その典型的美術家といえる。89年、折から社会的な脅威となっていたエイズに感染し、43歳で没した。
[平木 収]
『ロバート・メイプルソープ写真、パティ・スミス文、高野育郎訳『メイプルソープの花』(1990・宝島社)』▽『ロバート・メイプルソープ写真、ディディオン・ジョーン文、高野育郎訳『メイプルソープと美神たち』(1992・JICC出版局)』