改訂新版 世界大百科事典 の解説
モグーリスターン・ハーン国 (モグーリスターンハーンこく)
14世紀中葉~16世紀初頭,天山山中からセミレチエにかけての遊牧地帯モグーリスターンMoghūlistānを本拠に東トルキスタンを支配したモンゴル人の国家。モグーリスターンとは,〈モグール〉すなわち〈モンゴル人〉の土地を意味するペルシア語。モグール・ウルス,東チャガタイ・ハーン国ともいう。14世紀の40年代に,チャガタイ・ハーン国東西分裂の結果として成立した。
西チャガタイ・ハーン国では,王族らが急速に定住民化・イスラム化していったのに対して,この国のハーンたちは,シャマニズムの信仰とチンギス・ハーンの定めたヤサ(ジャサク)法の遵守を主張して,モンゴル遊牧民の伝統的生活を維持することに努めた。しかしトゥグルク・ティムール・ハーン(在位1346-63)の時代にイスラム化すると,王族はしだいに定住民化し,また15世紀の中葉以降,草原地帯にカザフ,ウズベク,オイラートなど新たな遊牧勢力が勃興すると,ハーン国の部民の多くがこれらの新勢力に合流したため,ハーン国は急速に弱体化した。ハーンをはじめとする支配者たちは,遊牧地帯を捨ててタリム盆地の定住地帯に移住し,16世紀初頭には,トゥルファン・ハーン国,カシュガル・ハーン国を形成し,16世紀末までには後者が前者を併合した。
執筆者:間野 英二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報