モンゴル帝国時代に法令,法度を意味した言葉。ヤサはトルコ語で,モンゴル語ではジャサクJasak(札撒,札撒黒)という。この語はモンゴル帝国建設前,軍律,軍法などの意味で用いられていたらしい。1206年の帝国の建国とともにチンギス・ハーンは帝国の基本法を定めたが,それは大法令(イェケ・ジャサクYeke Jasak)と称された。これはその後1218年,25年に手が加えられて整えられた。大法令はモンゴル族の慣習法に基づきながら,大帝国の統治に必要な種々の内容をもりこんで法典化されたものとみられる。ただしこれがきわめて立派な体系を有したとする説もあるが,わずかの断片しか伝わらない以上,確かなことは不明である。いずれにせよ,大法令はチンギス・ハーンの没後代々遵守され,帝国滅亡後も内陸アジアの国々に影響を及ぼした。例えばティムール朝ではイスラム法とともにこれがトルコ人に適用されたのである。
執筆者:吉田 順一
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