日本大百科全書(ニッポニカ) 「もみ紙」の意味・わかりやすい解説
もみ紙
もみがみ
じょうぶな和紙をもんで、しわ(しぼともいう)をつけたもの。その起源は紙衣(かみこ)(紙子)とも関係して平安時代中期にまでさかのぼると考えられるが、書画の表装や工芸材料などにされたのは中世以降である。1813年(文化10)の式亭三馬著『浮世風呂(ぶろ)』に「もみ紙で拵(こしら)へた島田、丸髷(まるまげ)、島田くづし」とあるように手芸材料にされたほか、色の着いた具引(ぐび)き紙(胡粉(ごふん)を塗った紙)を乾燥したのちにもみ、部分的に顔料をはがして複雑な模様を出したり、雲母(うんも)や金銀の砂子(すなご)などで加工した。これらの雅趣のあるもみ紙は、色紙(しきし)や屏風(びょうぶ)、ふすまなどに張られた。古来の技法は1964年(昭和39)に、滋賀県の伝統無形文化財に指定され、現在も滋賀県草津市で製造されている。
[町田誠之]