モル分極(読み)モルブンキョク

化学辞典 第2版 「モル分極」の解説

モル分極
モルブンキョク
molar polarization

分子分極ともいう.ローレンツの内部電場が適用できる均一,等方的な物質の密度をρ,誘電率をεとしたとき,

で定義される量.ここで,Mは分子量である.P

PP ′ + Po
のように,
(1)電場による分子内での電荷の相対的変位にもとづく変位分極P ′と,
(2)分子の永久双極子モーメントが電場の方向に配向することによる配向分極 Po
の二つの部分からなる.アボガドロ定数Nで表すと,変位分極は分子の分極率αにより

P ′ = 4πNα/3
で与えられ,また配向分極は分子の永久双極子モーメントμ,絶対温度Tボルツマン定数kにより

と表せるので,

が成立する.この関係をデバイの式といい,誘電率の測定から分子の双極子モーメントを決定する場合の基礎となる.なお,光のような高周波数の交流電場に対しては,分子双極子の配向が追随できなくなるため Po = 0となり,この場合にマクスウェル関数

ε = n2 (n屈折率)
を導入すると,上式はローレンツ-ローレンスの式に一致する.また,単位質量当たりの分極を表す量

(1/ρ)(ε - 1)/(ε + 2)
を比分極といい,温度一定の気体に対してこの量が一定値を示すことはクラウジウス-モソッティの法則(モソッティ-クラウジウスの式)として古くから知られていた.[別用語参照]分子屈折

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のモル分極の言及

【電気分極】より

…配向分極率は,分子当り,α=p2/3kBTとなり,絶対温度に逆比例するという特徴がある。[(ε-1)/(ε+2)]にモル体積を乗じた量(これをモル分極という)を1/Tの関数としてプロットすると,有極性分子ではpによって定まる傾きをもつ直線(無極性分子では水平な直線)となり,この直線の傾きから双極子モーメントの値が求められる。 配向分極率は外部電場の周波数ωの関数であり,緩和型,またはデバイ型の分散,α(ω)=α0/(1-iωτ)を示す。…

※「モル分極」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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