電子分極率とイオン分極率を総称して分極率という。物質の誘電性を大きく支配するものである。
一つの原子において、原子核の周りの電子雲はつねに原子核に関して点対称を保って分布しているから、原子にもともと電気双極子が存在することはない。しかし、原子が電界の中に置かれると、原子に電子雲の変形がおこり、双極子が誘起される。電界(これは、原子の集団においては、外からかかる電界だけではなく、注目した原子と他の原子との相互作用を考慮した実効電界である)をF、誘起される双極子モーメントをμeとすると、普通μe=αeFが成り立つ。このαeは、スカラー(一つの数値だけで完全に表される量)であって、電子分極率といわれ、原子が決まれば決まる量である。電子分極率は分子においても考えられ、分子では一般にはテンソルであり、またイオンでも考えられる。
一方、物質に電界がかかると、物質内に存在する正・負のイオンが相対変位をして双極子が誘起される。そのモーメントをμiとして、μi=αiFのαiはイオン分極率といわれる。イオン分極率は、イオンの種類および物質内でのその配列状況で決まる複雑なものである。
[沢田正三]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
電場(強さF)がはたらいたために分子内に誘起される双極子モーメント(m)の単位電場強さ当たりの大きさをいい,体積の次元を有する.分極率をαとすれば
m = αF.
電場が一定で分子が等方的なときは,αは分子の配向に関係なく定数になるが,分子に異方性のある一般の場合には,αはテンソルになる.たとえば,二原子分子 H2,N2,O2 の分極率は分子軸方向(α∥)と直角方向(α⊥)では1.3ないし2倍近い差がある.また,電場が周期的に振動するときは,分極の原因となる電子分極,イオン分極,および配向分極それぞれに対応した異なる周波数依存が現れる.そのため,理論的取り扱いでは分極率を複素数で表すと便利なこともある(動的分極率).
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…ただしここで,Eは誘電体内部の電場であり,外部電場E0とは異なる。
[分極率]
誘電体に外部から電場を加えると,誘電体内部の原子,イオン,分子または基には局所電場Fが働き,原子,イオン,分子または基は分極して双極子モーメントPが生ずる。PはFに比例し, P=αFで与えられる。…
※「分極率」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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