日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
モレート・イ・カバーニャ
もれーといかばーにゃ
Agustín de Moreto y Cabaña
(1618―1669)
スペイン黄金時代の劇作家。マドリード生まれ。アルカラ大学で学問を修めたのち僧職に入り、トレドにしばらく住むが、やがてマドリードへ戻り宮廷人としての生活を送る。1657年トレドに移り、救済院長の職を務め、ここで生涯を終える。生涯に79編の戯曲を書く。スペインのテレンティウスと評価し、カルデロン・デ・ラ・バルカの強力なライバルと認める批評家がいる反面、作風からみて、ロペ・デ・ベガやカルデロンの亜流にすぎないと評される場合もある。代表作は『侮辱には侮辱で』(1654?)。これは、思いを寄せる貴婦人から冷淡にあしらわれて思い悩む主人公が苦労のすえにやっと相手の愛を獲得するに至るまでの紆余(うよ)曲折を描く楽しい作品。ほかに『伊達(だて)者ドン・ディエゴ』(1662)などが知られる。
[岩根圀和]