らしゃめん

改訂新版 世界大百科事典 「らしゃめん」の意味・わかりやすい解説

らしゃめん

西洋人のめかけ(妾)になった日本女性をののしった呼称。〈洋妾〉と書くことが多い。らしゃめんは〈羅紗綿(緬)〉で,もともとはメンヨウ綿羊)を意味することばだった。幕末期からそれが前記のように使われるようになったのは,西洋人の生活風習に対する一般日本人の誤解によるものである。喜田川守貞は《守貞漫稿》の中で,その間の事情を次のように説いている。彼は〈武州横浜ニテ西洋人ノ妾トナル女ヲ異名シテ“ラシヤメン”ト云〉としたあと,〈洋人犬ヲ堂ニ上シ,又己カ閨房中ニモ臥シム,国人誤テ洋夷ハ犬及ヒ綿羊ヲ犯スト思ヒ,其犬羊ト同ク処女ノ夷妾トナルヲ卑メ,雑夫仮名ヲ付テ羅紗メント云初シ〉もので,それが通称のようになったものであるとしている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「らしゃめん」の意味・わかりやすい解説

ラシャメン
らしゃめん / 羅紗綿

メンヨウをいう場合もあるが、一般には洋妾(ようしょう)をさす。幕末から明治にかけて、日本在住の西洋人の妾(めかけ)になった日本婦人に対する蔑称(べっしょう)。外人下級水夫がメンヨウを抱いて、あるいはその毛でつくった毛織物で暖をとったからといわれる。洋妾は長崎下田にすでにいたが、ラシャメンの名は横浜開港以後である。その第1号は、1860年(万延1)オランダ領事の妾となったテウで、公娼(こうしょう)に限るという当時の規定により、遊女屋抱えの形で鑑札を受けてからラシャメンになった。

稲垣史生

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