改訂新版 世界大百科事典 「リピトイシュタル法典」の意味・わかりやすい解説
リピトイシュタル法典 (リピトイシュタルほうてん)
前20世紀後半にイシン王国第5代の王リピトイシュタルLipit-Ishtarが制定した,シュメール語による法典。原本は石碑に刻まれたらしいが,粘土板文書の写本に記されて今日に伝わるのは全体の約3分の1,法律部分の5分の1弱(38条)である。この法典は製作年代や,序文・本文・後書きの3部構成法においても,犯罪処罰法においても,ウルナンム法典とハンムラピ法典との中間に位置する。序文では神々の命にのっとり,王が〈正義を国土に回復し安寧をもたらすために〉,住民の債務を免除し,賦役日数を軽減したと記されている。個々の法律は断片的な保存状態のものが多いが,船・役畜・果樹園・耕地耕作権や小作料など生産にかかわるもの,相続・婚姻・奴隷など社会生活にかかわるものが広く網羅されている。後書きではこの法典の石碑を破壊ないし改竄(かいざん)する者への神々の恐ろしい呪いが強調されている。
執筆者:五味 亨
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報