改訂新版 世界大百科事典 「ウルナンム法典」の意味・わかりやすい解説
ウルナンム法典 (ウルナンムほうてん)
現存する楔形文字法典のうち最古の,前2100年ころに制定された法典。ウル第3王朝の創立者ウルナンムが発布したと考えられ,前2千年紀前半の写本数点に断片的に伝えられている。序文では,シュメールとアッカドの支配権を得たウル市の主神ナンナルの命を受けたウルナンムが,異民族支配を一掃し,さまざまな不合理を正して社会的弱者の保護に努めたことが誇らかに叙述されている。約35条ほど残存する〈法律〉本文の中では,殺人,盗み,性犯罪,離婚,婚約不履行,傷害,偽証,農地の荒廃など,重要な諸問題が〈もしもこれこれのときには,(その罰は)…〉の形式で列挙され,裁判での判決基準が与えられている。ただし,これらがどの程度実際に適用されたかははっきりしない。傷害に対しては金銭による贖いを原則として当時の社会の状況を反映しているが,それの構成や内容はのちの諸法典の手本となった。
執筆者:五味 亨
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報