流行歌の曲名。サトウハチロー作詞、万城目正(まんじょうめただし)作曲。1945年(昭和20)10月封切の松竹映画『そよかぜ』の挿入歌。娯楽がまったくなかった終戦直後、食糧難や住宅難、さらにインフレの続く暗い世相のなか、映画に集まった観客は主題歌を歌う並木路子(みちこ)に関心を寄せた。再建直後のコロムビアレコードも、この歌を46年1月新譜として発売。また並木自身も、舞台へ出てリンゴを聴衆に向かってまく。そうした立体作戦が功を奏し始めたころ、ラジオが「のど自慢素人(しろうと)音楽会」の放送を開始した。同年3月以降のこの番組では出演者が繰り返し歌い、たちまち全国へ行き渡った。戦争で打ちひしがれた庶民は明るい曲調に心の支えをみいだし、戦後初のヒット曲となった。
[倉田喜弘]
… 1930年代には年間ほぼ500本つくられた劇映画は,40年の497本を最後に,41年232本,42年87本と激減し,45年にはわずか26本となった。
【占領時代の日本映画】
[リンゴの唄とGHQ]
15年戦争が日本の敗北で終わった1945年8月15日以後,最初に公開された日本映画は,8月30日封切の松竹作品《伊豆の娘たち》(五所平之助監督)と大映作品《花婿太閤記》(丸根賛太郎監督)であるが,2作品とも戦時中に企画されたもので,真の戦後映画第1号は10月11日封切の松竹作品《そよかぜ》(佐々木康監督)であった。主題歌《リンゴの唄》が一世をふうびした《そよかぜ》は,GHQ検閲第1号の映画でもある。…
※「リンゴの唄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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