日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
リーマン((Karl Wilhelm Julius) Hugo Riemann)
りーまん
(Karl Wilhelm Julius) Hugo Riemann
(1849―1919)
ドイツの音楽学者。音楽を父などから私的に学ぶ一方で法律、文献学、歴史学をベルリンとチュービンゲンの大学で修めた。プロイセン・フランス戦争に従軍したときに音楽への道を決心し、持ち前の感性と理論的思考の均衡を保って近代的な音楽史学と体系学の基礎を築いた。
個別的特徴に惑わされずに全体のなかでの位置づけをつねに試みた態度は今日でも賞賛に値する。マンハイム楽派再発見、ビザンティン記譜法研究、通史の試みといった歴史の見直しに加えて、和音の連鎖を機能和声法として理論的に把握したり、音楽統辞論の提唱や楽式論の展開を着実に書き残して、西洋音楽の理論的枠組みを明確に言語化した。また、言語における句読法に類似した音楽的フレーズの問題を、強弱と緩急の概念と結び付けて、音楽作品の有機的存立を指摘した。こうした幅広い視野をそのまま反映させたのが『音楽辞典』の編纂(へんさん)であり、1882年の初版以来改訂を重ね、後継者による補充とあわせて、現代にも光を放っている。95年からライプツィヒ大学で教え、同地に没した。
[山口 修]