レウィン

改訂新版 世界大百科事典 「レウィン」の意味・わかりやすい解説

レウィン
Kurt Lewin
生没年:1890-1947

ドイツ生れの心理学者。ベルリン大学に学び,第1次大戦従軍の一時期を除き,1933年ナチスのユダヤ人迫害を避けてアメリカに移住するまで同大学で研究を続けた。当時,同大学では新しい心理学説ゲシュタルト心理学を提唱したW.ケーラーたちが活発に研究を行っており,その影響を受ける。しかし,レウィンは人間行動の生起に関心をもち欲求動機といった領域に全体的力動的構造の概念を適用するとともに,生理学的説明を排し,トポロジーなどの数学的概念を援用した独自の場の理論を唱えた。アメリカでは集団内の人間行動の研究に取り組み,集団力学グループ・ダイナミクス)の祖と呼ばれる。晩年には理論と実践の統合をめざし,マサチューセッツ工科大学に集団力学のための研究所を創設したが,彼のもとからは優れた実験社会心理学者が多く輩出した。その数学的概念の理解などに批判はあるものの,誘意性,アクション・リサーチなど,彼の提唱した多くの概念とともに,その理論が現代の心理学に与えた影響は大きい。
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百科事典マイペディア 「レウィン」の意味・わかりやすい解説

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レウィン

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世界大百科事典(旧版)内のレウィンの言及

【グループ・ダイナミクス】より

…集団と個人との相互依存関係を実証的に研究し,一般的法則を見いだそうとするものである。集団に関する調査・実験・臨床研究がなされるようになったのは1920‐30年代のアメリカであり,レウィンKurt Lewin(1890‐1947)を中心とする社会心理学者によって体系化された。レウィンは集団を心理学的な力の場であるとし,個々の事象を集団の構造との関係でとらえようとする〈場の理論field theory〉を提唱した。…

【葛藤】より

…個人はその結果適切な行動をなしえないことになる。レウィンのトポロジーおよびベクトル心理学では,葛藤を個人がおかれている心理学的場の条件に基づいて,接近と接近の葛藤,回避と回避の葛藤,接近と回避の葛藤の3種類に分類している。 しかしこうした葛藤は主として意識的なものであるが,精神分析学など力動的な観点をとる心理学では無意識的な葛藤が重要視されている。…

【グループ・ダイナミクス】より

…集団と個人との相互依存関係を実証的に研究し,一般的法則を見いだそうとするものである。集団に関する調査・実験・臨床研究がなされるようになったのは1920‐30年代のアメリカであり,レウィンKurt Lewin(1890‐1947)を中心とする社会心理学者によって体系化された。レウィンは集団を心理学的な力の場であるとし,個々の事象を集団の構造との関係でとらえようとする〈場の理論field theory〉を提唱した。…

【ゲシュタルト心理学】より

…第2に刺激と知覚との1対1の対応関係(恒常仮定)を否定し,刺激は全体的構造の枠内で相互の力動的関係の上から知覚されると主張する。このような全体的力動的構造の概念は,当時の物理学の場理論の影響を否定しえないが,ケーラーの心理物理同型論やレウィンのトポロジー心理学説へと発展していった。ゲシュタルト心理学は心理学のあらゆる研究領域にわたって大きな影響を与え,心理学の主要な潮流となったのみならず,精神医学や神経学など隣接科学にも影響を及ぼした。…

【社会心理学】より

…また本能論衰退後に盛んになる行動主義の説は,実験的研究を促進するほか,行動に及ぼされる後天的な習慣や環境要因の重要性に注意を喚起した。1930年代以降は,実験的手法を用いての社会行動や集団内行動の心理的諸過程の研究がすすめられ,シェリフM.Scherifの社会的知覚,J.L.モレノのソシオメトリー,のちのグループ・ダイナミクスにつながるK.レウィンの集団行動の研究などが新生面をひらく。また,S.フロイトおよび新フロイト派の深層心理学が導入され,偏見,権威主義的性格,社会運動などの研究に適用されて成果をあげたことも特筆される。…

【人間関係論】より

…社会科学における〈人間関係〉的アプローチはかなり以前から始められており,すでに1930年代にイェール大学には人間関係研究所が設置されていた。また当時,心理学者たちが行っていた研究,たとえば,K.レウィンらの民主的,専制的および放任的リーダーシップに関する研究なども,このアプローチとみなすことができる。やがてこのアプローチは,第2次大戦後,心理学,社会学および文化人類学を基礎科学とする〈行動科学〉的アプローチに発展したが,〈人間関係〉という概念の形成とその定着にあずかって力があり,さらに〈人間関係的管理〉アプローチの誕生のきっかけをつくったのは,1920年代の後半に行われた有名なホーソーン実験である。…

【場】より

…この路線上には,現代の動物行動学におけるプロクセミクス,生活圏,なわばりすみわけなど,個体,群れ,種などさまざまなレベルでの生物の存在と環境空間とのかかわりに着目する概念系が見据えられる。 また心理学ではK.レウィンの〈生活空間〉が重要である。もともと心理的行動Bを個人Pと環境Eの関数(Bf(P,E))としてとらえるという物理学的アナロジーを心理学に導入したレウィンは,環境すなわち心理的な作用をもった〈生活空間〉を心理現象の根本に据えようとした。…

【フラストレーション】より

…フラストレーションの概念は,S.フロイトが不満に終わる性的興奮をそのように呼んだことに始まり,行動のメカニズムを説明するための精神分析学上の仮説的概念となった。K.レウィンおよびその弟子たちは,実験的研究に基づいて,〈フラストレーション‐攻撃〉〈フラストレーション‐退行〉の仮説を提唱した。つまり,フラストレーション状態は,その生活体に攻撃や退行の行為を生ぜしめやすいと考えたのである。…

※「レウィン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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