日本大百科全書(ニッポニカ) 「レディーメイド」の意味・わかりやすい解説
レディーメイド
れでぃーめいど
ready-made
元来は「既製品」を表す普通名詞であるが、現代美術の分野では、作者が自己の制作行為によってつくるのではなく、既成の物品(とくに日用品)をそのまま作品として展示しているようなケースをさす用語として用いられている。しかし「レディーメイド」は、デュシャンが1910年代にダダイスム運動の一環として行った自らの試みに名づけた名称であり、現代美術にさまざまな形でみられる既成の事物をそのまま用いたもののうちでも、特定の傾向をもつものだけをさすと考えるべきである。デュシャンは、既成の自転車の車輪、瓶乾燥器、便器などをそのまま展覧会に出品することによって、日常世界から切り離された形で存在する伝統的な芸術作品とその鑑賞形態、さらに、それを支える展覧会という制度や独創性の思想のもつ問題性を浮き彫りにし、「芸術とは何か」という根本的な問題提起を行った。「レディーメイド」は、そのような問いかけの延長上に展開された一連の試みをさす呼称と考えることができる。
[渡辺 裕]