車両を支持し、道路または軌道上を転動する輪。単に車(くるま)ということもある。ここでは鉄道車両の車輪を中心に記述する。他の乗り物、機械の車輪の発達史については「車」の項を参照されたい。
鉄道車両の車輪は鋼鉄製のレール上を転動するため鋼鉄製で、レールから外れにくくするためのフランジとよばれる突起部分と、レールに接触する踏面(とうめん)、車軸と結合するボス部、外周部分と中心のボス部を連絡する部分などで構成されている。車輪はその形状や構造、製造方法、使用方法などにより区別され、さまざまな名称でよばれている。
駆動システムと結合させ、駆動力を出す車輪を動輪、動輪を含む輪軸(車輪と車軸を結合したもの)を動軸とよんでいる。駆動力を出さない車輪は従輪、その輪軸は従軸とよばれる。
蒸気機関車では、シリンダー中のピストン速度が遅く、リンク式の増速機構と大きな動輪(直径1.7メートル程度)が使用されていたが、モーターが使用される電気機関車や電車では、駆動力は歯車で減速して動輪に伝えられるようになり、動輪の直径は小さくなってきた。機関車で1.1メートル以下、電車では0.9メートル以下のものが多い。小さな車輪には、車両の重心を低くして安定性を向上させる、ばね下質量を小さくして乗り心地を向上させるなどの利点があるが、動輪の場合は駆動システムからの制約があり、あまり小さくすることはできない。また、レールとの接触面積が減少し、接触圧力が高くなるという問題もある。
車輪には、外周の転動する部分(タイヤ)と中央のボス部およびそれを連絡する部分(輪心)が分離できるタイヤ付き車輪と、一体の鋳鋼または鋼鉄を圧延して製作した一体車輪がある。タイヤ付き車輪のタイヤと輪心は、焼嵌め(やきばめ)により結合されている。これは、輪心の外径よりも小さな内径のタイヤを加熱して膨張させ、輪心を挿入する結合方法である。タイヤ付き車輪はタイヤのみを交換できるため、蒸気機関車のように輪心にリンク機構を取り付ける駆動装置では経済的であった。しかし、焼嵌めしたタイヤの緩み管理を厳重にしなければならないという制約があり、リンク機構が使われなくなり車輪の直径も小さくなった現在では、経済性でそれほど有利ではなくなったため、ほとんどの車両で一体車輪が使用されている。
車輪は円筒形ではなく、円錐形を輪切りにしたような形をしていて、踏面についた傾斜により輪軸が線路の中心へ戻る機能を持っている。踏面の断面形状を円弧状にすると車輪の摩耗が少なくなるという実績があるため、踏面は単純な円錐面ではなく、さまざまな形状が採用されている。
[福田信毅]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…この言葉は2通りの意味で使われる。一つは車輪wheelの意味,もう一つは車輪で動く乗物一般,つまり車両vehicleの意味である。
【車輪の歴史】
車輪は回転運動装置のうちでは最も代表的なもので,その発達はろくろ,旋盤,ドリル,水車,風車などの歴史と密接なかかわりをもっていたと思われる。…
※「車輪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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