改訂新版 世界大百科事典 「レムリー」の意味・わかりやすい解説
レムリー
Nicolas Lemery
生没年:1645-1715
フランスの薬学・化学者。ルーアンのプロテスタントの家に生まれ,おじの所で薬剤師見習として奉公を始めた。6年間の放浪と研修の後,1672年にパリに出て薬局を始め,特許の売薬で成功する。また彼の私的な化学講義は評判になり,75年に《化学講義》として出版され,多くの版を重ねた。これは当時隆盛を極めていたR.デカルトの思想の影響を受けたと思われ,化学物質の性質を機械論(粒子の形と運動)によって説明している。薬学の本も執筆したが,こちらはそれまで知られていた事実のまとめにすぎない。99年にアカデミー・デ・シアンスの化学会員に選ばれ,以後もアンチモンに関する研究などがある。レムリーは,17世紀の医化学(イアトロケミー)から18世紀の実験化学への過渡期の化学者として位置づけることができる。
執筆者:吉田 晃
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報