薬剤師が販売または授与の目的で調剤する場所が薬局であり、薬事法により規定されている。薬局はその所在地の都道府県知事の許可を受けて開設される。その開設者は自ら薬剤師であるか、または薬剤師でない場合には専任の管理薬剤師を置かなければならない。許可の基準は、薬局の構造設備およびその薬局において薬事に関する実務に従事する薬剤師の員数が厚生労働省令の定めに適合し、かつ申請者が欠格条件に合致しないことである。また、医薬品を取り扱う場所であっても、許可を受けた薬局でないものには薬局の名称を付してはならないし、薬局の管理者は複数の薬局の管理者となることはできない。薬局の許可は3年ごとに更新を受けることになっている。医薬品および医療用具の販売業には一般販売業、薬種商販売業、配置販売業、特例販売業の4種があり、それぞれ都道府県知事の許可を必要とするが、薬局の開設者は業として医薬品を販売し、または販売もしくは授与の目的で貯蔵し、もしくは陳列することができる。すなわち、一般販売業の許可を得ることができる。このことは、薬局が医薬品の販売ならびに医師・歯科医師・獣医師の処方箋(しょほうせん)に対して調剤する施設であり、また特定の日本薬局方収載または日本薬局方外の製剤(国で定めた薬局製剤)の製造場所でもあることによる。なお、薬局製剤の製造には薬局医薬品製造業の許可を必要とする。また、昔は薬剤師の資格において自由に売薬を製造販売することができたが、現行の薬事法ではそれを認めておらず、特定の薬局製剤についてのみ現行法によって製造許可がなされている。
薬局には、健康保険法に基づく療養給付の一環として保険調剤業務を取り扱う保険薬局、さらに保険薬局のうち、保険調剤のみを行い他の医薬品・医薬部外品・医療用具・その他のものを販売しない、いわゆる調剤専門薬局がある。そのほか、病院や診療所の薬局があるが、これは薬事法の薬局ではなく、医療法上の調剤所であり、薬局と称することができるとされている。
[幸保文治]
薬剤師が販売または授与の目的で調剤の業務を行う場所。薬事法と医療法によって規定されているが,病院や診療所の調剤所は法的には別に扱われる。薬局の構造設備については,その面積,換気等の清潔の保持,照明度,調剤室の設置,保存設備,調剤・試験に必要な設備・備品等が詳しく規定された,厚生省令の定める基準に適合していなければならない。
薬局は,処方調剤を行い,患者に授与し対価を受ける場であると同時に,医薬分業が不徹底な日本の場合は,一般大衆薬を販売する場でもあり,薬剤師が行う技術に対して支払われる技術料を受ける場であると同時に,〈医薬品〉という商品の流通の末端を担う商行為の場という二面性をもっている。
薬局で行われるべき薬剤師の技術は,単に処方による調剤のみでなく,処方の点検,患者への服薬指導,投薬患者での副作用発現の迅速な把握,薬歴の作成等があり,開業医師との協力による地域医療への参加が望まれ,徐々にその活動は拡大している。
→薬屋
執筆者:辰野 高司
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…11世紀の十字軍のアラビア遠征,アラビアによる南ヨーロッパへの進攻などによる交流によって,アラビアの医薬学がヨーロッパに逆流した。ヨーロッパの各地にアラビアにならった新しい薬局が開設された。また11世紀にはギリシア・ローマ時代以来薬種を扱っていたピグメンタリウスの後継者が職人のギルトを模した〈調剤師同業組合〉(後の薬剤師同業組合)を結成し,錬金術によって発展したアラビア薬学の受け皿となり,親方による徒弟の徹底的錬金術教育が行われた。…
…薬局,薬店(やくてん)(薬種商が薬の販売を行っている店)および薬問屋等の総称。薬店,薬舗,薬種屋,木薬屋(あるいは生薬屋)などの名で,店舗を構えて薬をあきなう店を薬屋と呼んだのは江戸時代に入って以来といわれている。…
※「薬局」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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