日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロスミーニ・セルバーチ」の意味・わかりやすい解説
ロスミーニ・セルバーチ
ろすみーにせるばーち
Antonio Rosmini-Serbati
(1797―1855)
イタリアの哲学者。トレント近郊のロベレートに生まれる。パドバ大学で学び、1821年カトリックの司祭となる。1828年にドモドッソラのカルバリオ山に神愛会を創設、その後ピエモンテ政府の特別使節としてローマに派遣されたりするが、晩年は自分の修道会の世話や著述活動に専念した。キリスト教的唯心論の立場にたつ。彼はあらゆる形態の感覚論、経験論を超克するため、可能的で無規定な存在のイデアに、人間のすべての感覚と判断の基礎をみいだす。このイデアは、認識においてカントのカテゴリーに似た機能を果たしはするが、主体の本性そのものから出るものではなく、現実存在、すなわち神によって人間に刻印されたものと解する。このイデアは倫理の基準でもあり、「思弁的に認識した存在を実践的に承認せよ」が、倫理の根本的命令とされる。著作には『イデアの起源についての新試論』(1830)などがある。
[大谷啓治]