改訂新版 世界大百科事典 「ワタオウサギ」の意味・わかりやすい解説
ワタオウサギ (綿尾兎)
cottontail
カナダからアルゼンチンにかけての南北アメリカに分布するウサギ目ウサギ科ワタオウサギ属Sylvilagusに属する野生ウサギ類の総称。北アメリカを中心に12種が分布し,個体数も多く,年間2500万頭が狩猟されている。尾の下面にはえる房毛(ふさげ)が綿のように白く,よく目だつことからこの名がある。前脚が比較的短く,典型的なアナウサギの体型をもつが,育児用の巣をつくるほかはふつう巣穴をつくらず,ノウサギのように茂みなどの一定の場所を寝場所とする。体色は背側が茶色,腹面は白色。体長21.5~47cm,尾長1.5~6cm,体重246~2700g。
分布域が広くもっともふつうに見られるトウブワタオウサギS.floridanus(英名eastern cottontail)では体重800~1500g。雌のほうがやや体が大きい。砂漠から畑地,沼沢地,熱帯雨林までのあらゆる環境にすみ,おもに薄暮時に単独で活動して植物を食べる。繁殖はトウブワタオウサギでは年に数回行われ,雌は直径12cm,深さ10~15cmほどの穴を掘ってそのなかで1産3~6子を育てる。誕生時の子は無毛で,体重35~45g。12~16日で巣を出るようになり,4~5週間で離乳する。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報