アナウサギ(読み)あなうさぎ(英語表記)rabbit

翻訳|rabbit

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アナウサギ」の意味・わかりやすい解説

アナウサギ
あなうさぎ / 穴兎
rabbit
[学] Oryctolagus cuniculus

哺乳(ほにゅう)綱ウサギ目ウサギ科の動物。ヨーロッパ中部と南部、アフリカ北部に分布する。オーストラリアニュージーランドイギリス、南アメリカなどに移入され野生化したものは、農作物に甚大な被害を与えている。世界中で広く飼われているカイウサギは、本種から家畜化したものである。体長35~45センチメートル、体重1.3~2.3キログラム。前肢が短く、耳介の先端に黒色の部分がないことでノウサギと区別される。雌ウサギは出産に備えて、自分の腹から引き抜いた毛と柔らかい草を敷き詰めた育児巣をつくる。28~33日の妊娠期間ののち、3~9匹の赤裸閉眼の子ウサギを産む。しかし環境が悪化したり、ストレスが加えられたりすると、妊娠雌は子宮の中で発育中の胎児を吸収してしまう。この割合は自然状態で少なくとも60%であると報告されており、本種の個体数調節に貢献している。食物は草や穀類であるが、栄養分を効率よく吸収するために、通常の糞(ふん)と交互に排出する粘膜に包まれた特殊な糞を食べる習慣がある。ノウサギが完全な単独生活者であるのに対し、アナウサギグループで生活する。しかしこのグループは群れといえるほど組織化されておらず、半径数メートルの縄張り集合体である。

[林 良博]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アナウサギ」の意味・わかりやすい解説

アナウサギ
Oryctolagus cuniculus; Old World rabbit

ウサギ目ウサギ科。体長 35~45cm。耳や四肢が長く,眼は大きい。体の上面は淡褐色から黒色まで変化に富む。低木林や開けた土地などに穴を掘り,群れをつくってすむ。夜行性。草食性で,ときに小枝や樹皮などを食べる。本種はカイウサギの原種で,ヨーロッパ南西部からアフリカ北部が原産地であるが,いまではイギリス,フランス,ロシア,ニュージーランド,オーストラリア,南北アメリカにも移入され,野生化している。

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