日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルベール」の意味・わかりやすい解説
アルベール(1世)(モナコ大公)
あるべーる
Albert Honoré Charles
(1848―1922)
モナコ大公Prince of Monaco、海洋学のパトロンで海洋学者。カジノからの収入で海洋調査船イロンディーユ号、同2世号、プリンセス・アリス号、同2世号を建造、メキシコ湾流域、アゾレス、スピッツベルゲン方面など北大西洋の広範な海域と地中海の組織的な海洋物理学、生物学的調査に従事、多くの新知見を得た。そのなかには多くの深海生物新種の発見、モナコ海淵(かいえん)の発見、海流球による大西洋表層海流図の作成、地中海深層水の大西洋への流出の発見などがある。壮麗なモナコ海洋博物館の建設、パリ大学への海洋研究所の設置寄付、地中海科学探究国際委員会総裁としての活動もあり、今日のフランス海洋学発展の基礎を築いた功労者である。
[半澤正男]
アルベール(1世)(ベルギー王)
あるべーる
Albert Ⅰ
(1875―1934)
ベルギー王(在位1909~1934)。フランドル伯フィリップの次子。1900年バイエルン公女エリザベートと結婚。広く海外を見聞したのち、1909年伯父レオポルド2世の後を継いで即位した。ベルギーの中立維持の声明を近隣諸国に発し、また国防力の強化にも尽力。第一次世界大戦勃発(ぼっぱつ)直後、ドイツに対しベルギー領内の自由通行を拒絶、国民に感動を与えた。ドイツによる占領後は、ラパンヌに司令部を設け、イープル付近を確保、「騎士王」Roi Chevalierの異名に値する働きをした。戦後は経済復興に努め、科学問題のための基金創設にも熱意を示した。1934年2月17日ベルギー南部ナミュール付近で登山中に遭難死。
[磯見辰典]