労働者(読み)ろうどうしゃ

精選版 日本国語大辞典 「労働者」の意味・読み・例文・類語

ろうどう‐しゃ ラウドウ‥【労働者】

〘名〙
① 職業の種類を問わず、他人に使用されて労務を提供し、その対価として賃金、給料の支払いを受けて生活する者。
労働組合法(1949)一条「労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること」
② 特に、肉体の力を使って労務を提供しその対価を受ける者。肉体労働者。労務者
最暗黒之東京(1893)〈松原岩五郎〉二一「事業閑(ひま)にして労働者(ラウドウシャ)一帯が無事(むじ)に泣く時など」

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デジタル大辞泉 「労働者」の意味・読み・例文・類語

ろうどう‐しゃ〔ラウドウ‐〕【労働者】

自己の労働力を提供し、その対価としての賃金や給料によって生活する者。
主に肉体労働によって賃金を得て生活をする者。肉体労働者。
[類語]サラリーマン勤め人勤労者会社員ビジネスマンビジネスウーマンビジネスパーソンホワイトカラーグレーカラーブルーカラー

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改訂新版 世界大百科事典 「労働者」の意味・わかりやすい解説

労働者 (ろうどうしゃ)

自己の労働能力を商品として雇主に販売し,一定時間の労働の対価として得る賃金や俸給によって生計をたてる階級をいう。社会的労働に携わる〈就業者〉に関する統計用語でいえば,労働者は〈雇用者〉とほぼ同義であり,自営農,商工業者などの〈業主〉,家族の一員として業主の仕事を手伝う〈家族従業者〉から区別される。現在,先進諸国では就業者中に占める雇用者の比率が70~95%の高さにも及んでいる。生産単位の不断の増大を伴う資本主義の形成と発展が,生産者の圧倒的多数から生産手段(土地,機械,原料など)を剝奪(はくだつ),彼らを無産化(プロレタリア化)し,彼らに,集中化された生産手段を所有する資本家に〈雇われて働く〉ことを余儀なくさせたからにほかならない。労働者階級の発生・増加は,このような資本主義的生産関係の到来・普及とまったく不可分である。

 資本主義体制下の労働者は,彼の労働が生み出す価値の一部を賃金として受け取って,みずからの生活を維持し,他の一部を剰余価値として資本家の取得にゆだねる。この労働生産物の分与そのものの点からみれば,労働者は古代の奴隷や中世の農奴に等しい。しかし近代の労働者は,かつての奴隷や農奴とは違って,法的には自由であり,人格的には資本家と対等である。彼は自由に雇主を選び変え,雇主と対等に労働力の売買を取引することができる。とはいえ,この自由と平等は,労働力の販売自体が生活の必要性に迫られた事実上の強制であること,労働力の需給関係がともすれば失業者を創出する資本蓄積法則の支配下にあること,職場の労働は総じて労働力の処分権を購入した資本家によって指揮され管理されていることを考慮するならば,なお形式的なものにとどまっている。この〈経済外的強制の不在〉と裏腹になった〈経済的強制の実在〉を知ることが,やがて資本主義体制そのものを批判する階級意識を成熟させていく。こうした意識の側面を重視して定義すれば,労働者は〈雇用者〉よりも限定されよう。労働運動の世界では一般に労働者とは,彼らを搾取し支配する資本の陣営に共同して対抗しようとする意識性を担う集団であり,資本主義社会に支配的な価値観にともすればなじみやすい上層ホワイトカラーを含む〈中産階級〉のそれとは異なる,独自的な生きざまを示す階層のことである。
執筆者:

労働法における労働者と一口にいっても,それは個々の法令により違いがある。まず労働基準法は労働者を〈職業の種類を問わず(ただし,同居親族のみを使用する事業は例外),事業または事務所に使用される者で,賃金を支払われる者(ただし家事使用人を除く)〉(労働基準法9条)と定義する。〈使用される〉というのは〈雇われる〉という言葉より広い意味で,実質的に他人の指揮命令に従って働くという関係があれば,名目は請負委任などであって必ずしも雇傭契約関係になくとも,これを労働契約関係にある労働者としている。したがって労働基準法における労働者には失業者は含まれない。これに対し労働組合法における労働者は〈職業の種類を問わず,賃金,給料その他これに準ずる収入によって生活する者〉(労働組合法3条)であり,現に使用されていなくとも賃金生活者であれば労働者とされている(労働金庫法2条も同じ定義を用いる)。また,職業能力開発促進法(旧職業訓練法)では事業主に雇用される者および求職者を労働者とし(職業能力開発促進法2条),さらに雇用政策関係法令では働く意思と能力のある者を広く労働者として扱っている。

 以上の定義を総合した法律における一般的な労働者概念を設定する実益はあまりないが,憲法における労働者概念をそうしたものとして考えると,労働者とはそれが公務員たると失業者であると,また外国人であると監督的地位にあるとを問わず,他人に使用されもしくは使用されようとしている者をすべて含む広い概念であるということになる。
執筆者:

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人材マネジメント用語集 「労働者」の解説

労働者

・労働基準法における労働者とは、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」をいう。(労働基準法第9条)
・労働者であるか否かの判断は、
(1)労働提供の形態が使用者の指揮命令かの労働であること。
(2)賃金が労働に対する対価として支払われていること。
の2点の基準で判断される。
・インターシップにおける実習は、見学や体験的なものであり。使用者から業務の指揮命令を受けていなければ、労働者として扱われない。しかし、直接生産活動に従事
し、その生産活動により生じる利益等が当該事業場い帰属し、使用従属関係が認められる場合は労働者に該当する。インターシップ中の学生の取扱いは、実態を持って判断される。
・諸外国から1年以内の期間で、技術・技能・知識を取得しにきた研修生は、基本的には労働者には該当しない。

出典 (株)アクティブアンドカンパニー人材マネジメント用語集について 情報

世界大百科事典(旧版)内の労働者の言及

【企業意識】より

…労働者が就業先の企業に対してもつ一体感,企業忠誠心などの企業帰属意識をいう。企業意識が強ければ離職・転職も少なく定着性があり,企業の経営方針に協力的で,勤労意欲(モラール)も高い。…

【資本主義】より


[資本主義と市場経済]
 資本主義経済においては,生産活動も生産の必要そのもののためになされるのではなく,利潤の獲得のためになされる。資本主義の生産方法は,資本の所有者(資本家)が,それを投下して生産に必要な原料・機械そのほかの諸手段を購入するとともに,賃金を払って労働者(賃労働者)を雇用し,工場・職場で財・サービスを生産させ,それらを商品として販売することによって利潤を獲得する,つまり資本による営利の企業活動として行われる。 このような生産方法が実際に可能になるためには,生産した財・サービスを販売する市場が存在しているだけでなく,生産手段と労働力を調達する市場が存在していなければならない。…

【資本論】より

…《経済学批判》や《資本論》のいわば前身ともいうべき,〈資本一般〉に関する1857‐58年の草稿が,《経済学批判要綱》として1939‐41年にモスクワで刊行された。
【体系の3要素】

[フランス社会主義]
 これは,フランス革命のブルジョア的限界を,当時産業革命の波及によって形成されつつあったプロレタリアの立場から批判,労働者階級の解放を人間解放として要求しつつあったフランスの,たとえばサン・シモン,F.M.C.フーリエ,F.N.バブーフなどのヒューマニスティックな社会主義または共産主義思想である。この要素は,マルクスの学説および《資本論》の体系を貫く情熱であり,また軸である。…

【賃金】より

…この労働の代償として受け取る報酬が賃金である。工業化が起こる前は,生産の規模も小さく,労働者の役割や地位はほとんど慣習や法によって規定されていた(領主と農奴,親方職人と見習工など)。しかし,近代の産業社会は工場などの生産規模を増大させ,雇う者と雇われる者との関係を著しく没個人的なものに変換してしまった。…

【賃労働】より

…奴隷や農奴の場合は,一定の時間決めで労働力を売るということはなかったし,また彼らは人格的にも主人や領主に従属していた。だから賃労働が支配的な形態となるためには,単なる社会への商品経済の浸透だけではなく,封建的な束縛から解放され,またこれといった生産手段をもたず,したがって生活手段ももたない,いわゆる〈二重の意味で自由〉な労働者が歴史的にまた恒常的につくりだされねばならなかった。歴史的には,これは封建的家臣団の解体やイギリスで最も典型的にエンクロージャー(囲込み運動)として現れた農民の土地からの追い出しによって行われた。…

※「労働者」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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