アンコーレ族 (アンコーレぞく)
Ankore
Ankole
東アフリカ内陸のウガンダ西部,ビクトリア湖西方のアンコーレ地方に居住する部族。人口約80万。バントゥー語系のルニャンコーレ語を話す。長い角で有名なアンコーレ牛を飼養するナイロート系の長身のバヒマ(ヒマ)族と,バントゥー系の身体特徴をそなえる農耕民のバイル(イル)族からなる。15世紀にビクトリア湖北方地域には伝説的なバチュウェジ王朝が成立したといわれるが,まもなく崩壊し,王族のうちのヒンダ(ルヒンダ)王族はアンコーレ(ヌコーレ)王国を形成し,ビト王族の形成したブニョロ・キタラ王国に対抗した。アンコーレの王はバチュウェジの王統を継ぐ者として聖なる性格を帯び,バヒマ,バイル両族の上に君臨した。支配層のバヒマ族は牛を飼い,ミルク,バター,肉を供給し,牛に価値を置く牛牧文化をもつ。バイル族は農耕と同時に鍛冶や土器製作など工芸を担当し,バヒマ族に従属した。その後,植民地時代からの現金経済の浸透とともに,牛牧民のバヒマ族にかわって,現金作物を栽培するバイル族の相対的な社会的地位の上昇がみられる。
執筆者:赤阪 賢
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
アンコーレ族
アンコーレぞく
Ankole; Nkole
バニャンコーレ族 Banyankoleともいう。ウガンダのビクトリア湖の西,エドワード湖の東の草原地帯に住む湖間バンツー語系諸族で,人口約 140万と推定される。起源の異なる2集団,牛牧民のヒマ人と定住農耕民のイル人で構成される。両者は4世紀にわたる歴史をともにし,父系氏族制度など共通する部分も多いが,政治的,社会的には厳格に区別されていた。アンコーレは 16世紀以来,ムガベと呼ばれる神聖王を戴く強力な王国を維持してきたが,ヒマはオクトイザ (保護関係) という関係を通じて王と個人的に結びついた戦士,支配階層を形づくり,一方イルはこれらヒマに仕える従属的地位におかれていた。両階層の通婚はきびしく禁止され,伝統的な威信の象徴であった牛 (とりわけ雌牛) の所有もヒマの特権であった。しかしイギリスによる植民地支配以降,ヒマのイルに対する支配を支えていた諸価値がくずれ,農作物の市場価値の上昇とともにイルの経済的,社会的地位も向上してきた。
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世界大百科事典(旧版)内のアンコーレ族の言及
【ウガンダ】より
…【中村 和郎】
[住民,社会]
国名が〈ガンダ族の国〉に由来するように,ガンダ族が最大の人口(1983年で17.8%)を持つ。ついでテソ族(8.9%),アンコーレ族(8.2%),ソガ族(8.2%),ギス族(7.2%),チガ族(6.8%),ランゴ族(6.0%)などが有力である。 ウガンダの住民構成は,さまざまな種族の移住の歴史により複雑になっている。…
【スクマ族】より
…スクマ族の口頭伝承によれば,先祖はタンザニア中央部に住むニャムウェジ族から分かれて,この地に北上してきたと伝えられる。伝統的には39もの首長国chiefdomに分かれていたが,各首長はかつて北から侵入してきた牧畜民[アンコーレ族]のうちのバヒマ(ヒマ)族の子孫であるとの系譜をもっている。首長は祖先を崇拝する儀礼の中心でもあり,政治的・宗教的権威を担っている。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」