日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビクトリア湖」の意味・わかりやすい解説
ビクトリア湖
びくとりあこ
Lake Victoria
東アフリカのケニア、ウガンダ、タンザニア3国にまたがる湖。面積6万9480平方キロメートルで、淡水湖ではスペリオル湖に次いで世界第2位。東西の大地溝帯に沿う隆起帯に挟まれた浅い皿状の凹地にできた湖であるので、最深部でも82メートルしかない。湖面の標高は1134メートルである。西岸を除いて湖岸線は屈曲に富み、ケニア側のカビロンド湾など大きな湾入がある。西方からのカゲラ川をはじめ、周辺の高原から流入する河川は多いが、流出口は北岸のビクトリア・ナイル川のみである。赤道直下にあるこれだけ大きな水体であるので湖陸風が発達し、日中は湖から吹き出す湖風、夜間は周辺の陸地から湖に集まるように吹く陸風がみられる。このため、湖上では夜間に上昇気流が生じて雨が降りやすい。1858年、イギリス人のスピークが「発見」し、これがナイル川の水源かどうかをめぐってバートンとの間で論争があったことは有名。1875年にスタンリーが湖を周航した。1954年、流出口に近いビクトリア・ナイル川にオーエン滝ダムができて湖面の水位が約1メートル上昇した。沿岸は豊かな農業地域で、西岸から南岸にかけてはバントゥー系のガンダ人やスクマ人、ケニアにはナイル語系のルオ人などがトウモロコシ、サトウキビ、コーヒー、ワタなどを栽培する。湖岸にはエンテベ、キスム、ムワンザなどの都市がある。
[中村和郎]